邦人保護と「パラダイス鎖国」の関係
これは、ずっと疑問に感じているが、私の中では結論が出ていないことをつぶやいているだけの話。
今朝テレビのニュースでは、エジプトから脱出してアメリカに戻ってきた人を映していた。日本人も、例によって政府の出足が遅いとか批判されながらも、どうやら無事に欧州に向けて出国されているようで、よかったと思う。(ただ、この「チャーター機」がどこの飛行機会社かは、いくつか記事をググっただけでは出てこない。たぶん、日本の航空会社ではないのだろう。また批判されるから、ということでわざと書いてないのだろうか??)
以前、イランのときだったか湾岸戦争のときだったか、邦人保護のためにJALを飛ばそうとしたら(組合に?)拒否され、トルコに助けてもらった、ということがあったが、その時「これは一体、どう考えればいんだろうか??」と思った。
私の住むアメリカは日本の同盟国だし、クーデターや革命が起こる心配もないからいいのだが、世界の中ではそういう危険のある国のほうが多いぐらいだ。80年代、日本企業がアメリカばかりを相手にガンガン輸出していた頃でも、貿易摩擦はあったが、少なくとも身の危険を感じることはなかった。しかし、そのころ私の勤務先であったホンダでは、世界の隅々まで、途上国相手にも手広く商売をやっていて、従業員が種々の危険に巻き込まれることはあった。ホンダはすでに大企業だったので、自前でかなりの問題を解決することはできたのだが、そういう準備のない中小企業や個人だったら、そうはいかなかっただろう。そのために、商社があったともいえるわけだが。
時は移り、もはやアメリカだけが世界の中心ではなくなった。中国や新興国に商売のチャンスがたくさんあるわけだが、そういう国に出かけていって、日本人が危ない目にあったとき、セオリーでいえば、今でも自衛隊は助けに来てくれないはずだが、それで私の認識はあっているだろうか?私の感覚でいえば、これまでエジプトは比較的安定していて欧米寄りで、都市化も技術もそこそこ進んでいて、人口も(8000万ぐらいで成長中)大きく、BRICSとそれほど違わない国、というイメージを持っていたのだが、そういう国でさえ、今の状況なわけだ。中国はご存知のとおりで反日デモがよくあるし、リスクは常にある。
その昔、仕事で時々ブラジルに行っていた頃、リオデジャネイロの港に自衛隊の練習船が寄港したことがあった。そのとき、港に日系ブラジル人がたくさん集まって日章旗を振って大歓迎していたのを見て驚いた。もしブラジルで暴動が起こってこの方々が危なくなっても、自衛隊は助けてくれないのに、この片思いは何なんだ??
私も「パラダイス鎖国」などと言って「グローバル化」を提唱する一人ではあるが、この本でも書いたように、「日本人は日本にいるのが一番安全」という事実は厳然としてある。アメリカ人なら、世界のどこにいてもアメリカ軍が助けにくるが、日本軍は助けに来ない。民間企業であるJALなどにやらせようというのはしょせん無理だ。一方、華僑などは、昔からそんな枠組みのはるか外にいてオウンリスクで世界中に散っているが、そのかわりに自分たち同士で身を守るノウハウがいろいろと蓄積されている。
日本政府も近頃は「グローバル化推奨」の方向になっているようだが、それをバックアップするための邦人保護対策がないのでは、「無責任」なんじゃないだろうか?それが本来の国の政府としての役割の一つじゃないのだろうか?トルコに助けてもらった頃からさんざんいろいろ言われながら、それが未だにできない(自衛隊の海外派遣への抵抗が大きい)というのは、結局日本国民はそれを望んでいないということなのだろうか?「安心」なアメリカが沈み、「リスクの大きい」新興国が浮上してきたここ10−20年ほどの間、日本が世界の中で相対的地位が沈んだのも、遠因の一つとしてこういう話はあったのではないだろうか?「パラダイス鎖国」が「清潔」とか「メシが美味い」とか、そういうレベルならばまだかわいいのだが、「身の安全」という話が実は要因として結構大きいのだとしたら?
それとも、ソマリア沖で日本の自衛隊が日本船を護衛するようなことはできるようになっていて、それを批判する声はあまり聞いたことがないので、事態は少しずつでも先に進んでいて、それほど悲観する必要はないのだろうか?
「海外在留邦人」の一人として、私なら「グローバル化推進+邦人保護政策推進」の積極策でやってほしいところだが、どこの党もそんな政策について話しているのは聞いたことがない。在留邦人など人数が少ないから票にはならないのだが、ボディーブローで日本の経済にそれが効いているかも、と思うが、さて、次の選挙の海外投票ではどうしたものだろうか・・・?それともそんな迂遠なことは諦めて、日本の棄民傾向を仕方ないと受け入れ、産業界が自前で「華僑的」にやっていくしかないのだろうか?
うーん、よくわからない・・・