日本におけるテレコム新規参入の難しさ

日経新聞に載っていた、「次世代高速無線通信」の免許割り当ての話を読んで、ちょっと不安になった。

テクノロジー : 日経電子版

90年代にアメリカで、携帯事業への新規参入を創出しようとしてベンチャーに特別に周波数枠を割り当てて競売したことがある。私自身、それに応札したベンチャー会社で波乱万丈の2年間を過ごした挙句、会社は倒産してレイオフされた。結局、さらに数年の紆余曲折の末、その周波数はベライゾンの手に落ちた。だから、身にしみるのである。

アメリカでも、700MHz帯の免許割り当てに際しては、既存の大手に応札を許すな、と、グーグルなどの新興企業連合が反対し、大騒ぎになっているのは知っている。

http://www.wi-fiplanet.com/news/article.php/3681356

それでも、アメリカならまだ、グーグルが周波数をとっても、シンギュラーに買収されたAT&Tワイヤレスなどから大量に優秀な人材が吐き出されたりしているので、そういう人たちを連れてくればいいだけの話。でも、日本はドコモもKDDIも、優秀なワイヤレスに経験豊富な人材を吐き出してはくれない。

ベンダーの言うとおりに機器を買えば、それで無線のサービスができるというものではない。キャリアのノウハウというのはキャリアにしかない。ウィルコムは今でも無線サービスをやっているからまだいいが、アッカが免許とって、きちんとサービスが立ち上がるまでには、かなりの時間がかかるんじゃないかと心配。日本が通信事業に新規参入を創設しようとする時の最大の難関はここにある。

しかも、全国展開には膨大な資金がいる。ベンチャーが資金を集めることが比較的容易なアメリカですら、結局それだけのお金は集められなかった。いろいろ新規参入が頑張って、なんとか数社は残っているが、ほとんどは既存大手が最終的に買い集めて終わりだった。日本で無理にやらせれば、なんか倒産した怪しいVoIP会社みたいに、無理な資金集めに走ったりしないだろうか・・・

それから、ウィルコムの「次世代PHS」という技術・・・OFDMを取り入れてるらしいけど、いわゆるスマートアンテナ技術を核とした京セラ(=ウィルコム)のiBurstの改良版?いずれにしても、日本独自の技術で、NTTなどが海外に一生懸命売ろうとしたけどダメだったPHS技術の後継で、今のところ海外での実績もなく、あまり有力視もされていないので、またまた「ガラパゴス化」が進むのでは?アメリカのクアルコムにライセンス料を払いたくないがゆえに「日本製技術」を後押しする官僚の意向?某稲盛氏とかの影響力?

・・などとカンぐりたくなってしまった。

ただでさえ、莫大な投資が必要なテレコムは、新規参入が難しい産業である。やり方を間違えると、10年は取り返しがつかなくなる。新規参入を促進したいのはわかるけれど、あまりに業界が細分化するのは時代に逆行していると思うし、そんなに無線のサービスは簡単にできるものではない。既存の大手キャリアをシャットアウトすることで、日本がますます無線の分野で世界の中で競争力を失ったりしないか、心配である。ここ数年、アメリカは「集中化」で競争力回復を図ってきたところだし・・・

ホントは既存大手にも席をあけてほしいと思うのだけど、席が二つしかないから、どっちかをドコモにしてしまうと難しいのもわかる。だから今のやり方でいくなら行くでいいけど、「あ、やっぱりうまく行かなかった」というときに、すばやく方向転換してほしいものである。アメリカは時々政権交代があるからいいが、日本はそうは行かないので、「そのときの責任者の顔をつぶせない」とかいう理由でいつまで経っても変えられない、というのが普通である。今までは、「諸外国」の後追いだったので、いろいろな事例を見たあとであまり思わぬ結果が出ることがなかったのでまだよいが、今回のように諸外国に先駆けちゃって、方向転換できないと大変だよー・・