元AT&TのウィタカーがGMのCEOになるそうな
ちょっと驚いたので脊髄反射してみる。
Former AT&T Chief to Be GM Chairman - WSJ
エド・ウィタカーといえば、テレコム黄金時代を戦い抜いて現在の「2大キャリア体制」の一角を築いた人であり、私には「コワモテ」という印象が強い。シリコンバレー風の、新しい時代に柔軟に対応していくといったヤワなスタイルとは真逆。
90年代当時、旧AT&Tをバラバラに分割した7つの「ベビーベル」といわれた地域電話会社(今のNTT東・西のモデル)があった。ウィタカー氏はそのうちテキサスを本拠とするサウス・ウェスタン・ベル(SBC)のCEOとなり、同輩ベビーベルのアメリテック・パクベルを相次いでロールアップし、AT&Tワイヤレスと長距離電話のAT&Tを買収し、最後にAT&Tワイヤレスの合弁相手であったベルサウスも巻き取って、米大陸西側(というか北東部以外)の地域電話アクセス・携帯電話・長距離電話を全部攻め取った「西軍の大将」である。(これに対し、ベル・アトランティックを核として同じように携帯と固定を全部集めたベライゾンが東軍である。こちらも買収を繰り返してきたが、核となったベビーベルは、ベル・アトランティックとナイネックスの合弁だけである。)
東西両者ともに、業界で「Bell Head」とも言われる、「頭が固くて、保守的で官僚的で、云々・・・」という(どこかで聞いたような)体質の会社であり、そのうちでもウィタカー氏は、テキサス風マッチョで「企業買収のブルドーザー」で、また「ネット中立性」議論の発端となった、「やつらはタダ乗りしている」という攻撃的な発言をしたような考え方の人、というのが私の理解。
いわば、旧型産業の権化みたいな人というイメージがあるのだが、今回、チャプター11から脱した後のGMのCEOに指名されたというのは、どういう意味があるのかなぁ?現在、同じテキサスの石油会社エクソン・モービルの役員を務めているそうだが、自動車会社の経験はなさそう。テレコム業界をロールアップした過程では、1985年体制(AT&T分割、地域・長距離の相互不可侵)の法的枠組みを壊していく必要があったのだが、そういった政府への影響力や経験が買われたのだろうか?ヘタに表面的に「新しい流れ」にチャラチャラせず、なりふり構わず旧型産業の足腰をしっかり固めさせることに成功したとも言えるので、その手腕に期待しているのかもしれないし。
グーグル・モーターズのほうがネタ的には面白かったと思うのだけど、なんだかその「敵」の立場の人に、GMが委ねられることになったというのも一興。それと、月とスッポンというか、ゴジラとアリぐらいのレベルの違いがあるが、自動車会社から電話会社へと、逆方向に転身した私としては、ちょっと興味あるところでもある。