「Big in Japan」と「スーパーニッチ」

昨日、「スーパーニッチ戦略」について書いたきっかけは、アメリカ人の友人(日本語堪能で日本のことをよく知っている)と、ここに書いたいくつかの例の話をしていた際、彼が「まさにBig in Japanなんだよね」とコメントしたのが面白く、いろいろ考えてみたことだった。

Wikipediaなぞを調べてみると、Big in Japanというフレーズは、80年代以前、洋楽がポピュラーだった頃からあったらしい。日本でだけやたら人気があるのだが、本国である欧米ではサッパリ、というバンドのことを揶揄していった用語で、例としてスコーピオンズやMr. Bigなどが挙がっている。「Big in Japan」という名前のバンドやアルバムもあったらしい。日本での人気をテコにしてその後世界的にブレイクする例(クイーン、ボン・ジョヴィなど、おーなつかしい!)もあったが、当時は今よりずっと日本のブランド・イメージが低かったため、基本的にはありがたくないレッテルであった。*1スコーピオンズなどをご存じない若い方なら、「ビリーズ・ブートキャンプ」を思い浮かべていただければいいだろう。

どうも、この時代から日本の「スーパーニッチ」文化というのが結構パワフルで、それが国際的にも知られていたということになる。この頃は欧米バンドだったのが、最近は韓流アイドルになったということのようだ。日本は、人口が相当に大きく、所得も相当に大きいのでリッチな国内市場があるが、英語圏でなく文化的にやや孤立しており、(少なくとも少し前までは)メディアの支配力が強くコミュニティ内の「相互フィード」が強力で、流行を創りだす力が強い。裏返せば、他の国ではこれだけ条件が揃わないためこうはいかず、日本だからこそできる贅沢だ。

つまり、「パラダイス鎖国」。リッチながら孤立したコミュニティである日本全体が、「スーパーニッチ」の罠に陥りがちなのだ。昨日の繰り返しになるが、ベンチャーや中小プレイヤーとしてはその戦略は大いにアリだが、メジャー・プレイヤーがスーパーニッチだけに頼るのは、メインストリームの人たちを「疎外(alienate)」してしまう可能性があるため、あまり得策ではない。

冒頭の友人の発言では、日本発・日本だけでビッグ・よく儲かっているモノを「Big in Japan」と称している。(それとは関係ないのに、そういう名前の企業もある。)この表現には、「日本だけでビッグってのは、メインストリームじゃないってことだな、自分たちとは関係ないな(疎外、alienate)」といったニュアンスがある。

ちなみに、モバイル・ブロードバンド周辺では、最近では「Big in Korea」というフレーズも聞いたことがある。日本以上に、韓国のブロードバンド普及率が高く、モバイル先進国であることが業界では広く知られているからだが、ま、韓国も似たようなもん、ということか。

*1:なお、Wikipediaの記述によると、その後日本で洋楽の勢いが衰退し、Big in Japanを演出してきた「ミュージック・ライフ」誌が廃刊という時代の流れの中で、この現象は消滅したとされている。