そういえば、「スマートフォン化している飛行機」ヴァージン
先日、日経ビジネスオンラインに「スマートフォン化する自動車」というコラムを書いたのだが、その後出張のための飛行機の予約をしていてふと自分で気づいた。
なぜ、私は好き好んでヴァージン・エアラインに乗るのか?
マイレージの提携状況からいうと、ヴァージン・アメリカは他のマイレージとの提携がない(国際線はANAと共通なのでいいのだが、米国国内線はない)ので、実質的にはあまりトクにならない。しかし、それでも気がつくと最近国内出張はほとんどヴァージンに乗っている。
なぜかというと、多分、ヴァージンが「スマートフォン化」戦略(上記コラムでフォードがやっているのと同じ、「ライフスタイル」対策戦略)をとってるから、なのだろうと思い至った。
私の国内線利用状況といえば、サンフランシスコから乗って、行き先はラスベガス、シアトル、ロサンゼルス、サンディエゴといった近距離フライトが大半。子供がだいぶ大きくなったとはいえ、東海岸まで行くのは日程的にまだまだ負担が多い。だから、どうせマイレージは大してたまらない。料金も、どのエアラインもだいたい似たようなもの。
飛行機に乗っている時間はしょせん「ガマン大会」であり、どれでも料金が同じならば、少しでも楽しい気分になれるところがよい。機内エンターテイメント・サービスのチャンネルが多く、タッチパネルでハイテクぽくてかっこいいことなど、大して違いはないように思うが、同じお金を払って同じ行き先に行くなら、どうせなら、とヴァージンを選んでみる。そうすると、ヴァージンに乗っているお客というのは「テック・サヴィ」な若い人が多く、サンフランシスコをハブとして上記のような行き先に行くので、テクノロジー業界らしい人が多く、業界の友人と乗り合わせることもある。客室乗務員さんにイケメンがけっこう多いのも私には魅力。なんとなく楽しいので、なんとなく、いつもヴァージンに乗るようになっている。
自然にそういう「客層」が集まってきて、それが「カッコイイ」イメージを作り出す。我家の息子たちが「シアトルに行くならぜったいヴァージンがいい!」と指名買いを要求するのも、こういうサイクルにはいっているから、だと思う。(彼らは「あのゲームができるから」「スポンジボブが見られるから」と理由をつけるが、根本的には「カッコイイ」イメージにうまく乗せられている、と私は思う。)単なる「タッチパネル」の機能の問題ではなく、「ライフスタイル」の問題なのである。いわば、「機内エンターテイメント」をフィルターにして、うまくお客を選んでブランドイメージをつくっている、ということだ。
たまたま今年は欧州にも行く機会があり、サンフランシスコから英国にもヴァージンで行けた。そのとき日本から英国に来ていた友人たち(みな女性)も、ヴァージンに乗って来ていた。ただ、私にとっては一番問題な、太平洋上はヴァージンが飛んでいない。だからかねてから、はやいとこJALを切り刻んで、太平洋線をヴァージンに売却してほしい、と心からおもっている。
日本のエアラインは、きれいなオネイサンを並べてオジサンに媚びる文化からどうしても抜けられていないように感じる。おそらく、彼らの主要顧客がそうなのだから、それはそれでいい。でも、これだけ多くの競合会社のいる業界なのだから、オジサン層以外の人たちが楽しい気分になる、テック指向・ライフスタイル指向の異色飛行機会社が、一つぐらいあってもいい。
先日、日本人の集まった宴会でこの話をしたら、意外なほど熱心に賛同されたので、同じことを考えている地元業界日本人は多いようである。