ネット維新派支持宣言

いや、別に今更、わざわざ宣言出すほどのことじゃないんだけど。今までも、ずっとこのブログでは「ネット維新派」的な発言してきたわけなので。

なんでいまさらかというと、「医薬品ネット販売」の件でいろいろ考えているから。あちこちの友人がネットで話題にしていて、CNETの別井さんの記事なんか読んで、三木谷さんや國領先生などが委員会で「ネット攘夷派」のおじさんたちと渡り合っていると知っていたのだけれど、今日は津田大介さんまで参戦

津田さんや、慶応の金先生は、これまでも「著作権」の話で公聴会でネット攘夷派と対峙してきた人たちなので、なるほどー、維新派が一致団結してきているんだな、という印象を受けている。津田さんのブログにあるとおり、「この問題は今の日本の縮図」というのは私もそのとおりだと思う。

既得権益を持つ人たちが強く、その人たちが新しいものを受け入れられずに拒否するのはいつの時代でも同じだ。一つの例をあげる。私の故郷(湘南)の近くには江ノ電というかわいい電車が走っていて、これは「家の軒すれすれを走る」ことで有名。なぜそうなったかというと、藤沢駅から江ノ島駅あたりまで、現在の江ノ電とほぼ並行する形で「片瀬県道」という道が伸びているが、江ノ電が最初にできた100年前には、この道を人力車が走っていた。電車ができると人力車は困るので、人力車組合が大反対して、沿線の役所から建設認可が取れなかったため、仕方なく江ノ電(の前身)会社の大株主であった地元有力者の「敷地内」に建設することとなった。そのため、くねくね曲がっているし、家の軒先を走ることになった。

しかし、戦後だけを考えてみても、産業の興亡は当たり前のことで、繊維産業とか石炭産業とか、過去に栄華を極めた産業が衰退して次の産業に主力が移る経緯は続いてきた。

その時代と今がもし違うとしたら、次のようなことじゃないかいな、と思うのだ。

  • 経済全体がどんどん伸びている「時代の力」があるときには、新産業への移行によって起こる雇用のミスマッチや流通の破壊などが、成長によって吸収されていた
  • いわゆる「高度成長期」に主力産業として固まった、自動車や電機業界は、かなり長いこと「主力の座」を占め続けている
  • その間、「デジタル革命」の前半期には、「すでにできあがった流通経路などを大きく壊すことなく、みんながハッピーな形での進化ができた」ために、既存勢力と新勢力とのせめぎあいは比較的小さくて済んだ。(これについては、私の以前のエントリーを参照)それで、現在の状況は、それ以前に比べてもかなり堅固。
  • 高度成長期の産業興亡では、「新産業」のほうでもたくさんの雇用を創出できたので、話はわりと簡単だった*1けれど、「デジタル革命後期」である現在のネット経済では、「新産業」のほうの圧倒的に雇用創出力が弱い、または「弱いと思われている」。(これについても、私の以前のエントリーを参照)
  • 「明らかに次の世代を担う大型技術・産業」(雇用創出も含めての話)が見えず、新興勢力が旧勢力を圧倒するほどの説得力がない。
  • 「ネット維新派」勢力の中心である世代の人口が、「攘夷派」人口に比べて少ない。(Dan Tapscottの「Growing Up Digital」によると、アメリカでは逆なのだそうだ)

そんなわけで、自然にほっといても世代交代が進む、という感じではないのが現在の特徴なんだろうなと思う。

なお雇用に関して言えば、おおざっぱな話で言うと、「ネット企業」自体が雇える人の数だけでなく、その周囲で「開発者」「自営コンサルタント」などという形での裾野の広がりも本来ならばある。ただ、現在のところ、日本でプログラマーの数が全然足りないという事情や、雇用のフレキシビリティがないために自営的な開発者やコンサルタントになるのがまだ敷居が高いこともあり、またそういう問題の少ないアメリカでさえ、本質的に「なんたって自動車会社とその裾野産業が雇っている人」に匹敵するほどの雇用規模はネット産業には残念ながらないと思う。だからこそのGM救済なわけで。

これに対し、一言で解決策はない。「次世代の大型技術がない」という点については、私は、打開策は「試行錯誤しかない」のだから、「外国へ逃げる」ことも含め、人の言うことなどアテにせず、自分なりの指向性や個人の最適化戦略で、いろいろやってみようや、ということを繰り返し言っている。

一方、人口構成を考えると、「旧勢力と新勢力」との勢力バランスは、この先ずっと変わることはないということになる。今の団塊の世代が退場する頃には、その下の私の世代がまた頭の固い年寄りになるだけで、人口が減り続ける中では、いつでも「上の世代が下の世代よりも数が多い」状態が延々と続く。「維新派」はこの先かなり長いこと、マイノリティということになる。待ってればいいという話にはならない。

だから、せめて「維新派」の勢力を集めて、「旧勢力」にも説得力が持てるような人を前面に立てて、戦わなきゃいけないのかも、と最近思うようになった。先日のエントリーにある、「MILK」でのハーベイ・ミルクは、「ゲイ」という永遠のマイノリティの利害を代表して、暗殺されるかもしれない危険を冒して、政治家になった、みたいな話にも触発されている。

私はとても自分でMILKにはなれないし、遠くに住んでいて何もする力もないけれど、政治は苦手とかいって逃げてないで、せめて堂々とそういう人を応援するぐらいはしなきゃいかんのじゃないか、と思ったんだな。

いろんな考えがまだごちゃごちゃしているし、医療品ネット販売についてブログに書くほどの見識があるわけではないが、今日はとりあえず、この件に関して、「三木谷」「國領」「津田」「金」などといった、知ってる限りの「維新派」の方々を応援する、という宣言をするだけにしておく。

*1:それでも、例えば「繊維産業」と「電機産業」を比べたら、どっちが雇用創出力があるかは正確にはよくわからない。