日本におけるハワイの凋落は自己責任じゃないか論

この年の瀬も押し詰まった日に、どうでもいいことにかみついてみる。ハワイに行く日本人観光客が激減しているという話を読んだ。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/208804/

ハワイより黒川温泉のほうがいいよね、という話は、「パラダイス鎖国」の本にも書いた。やっぱり、そう思う人が多いらしい。本の中では、「日本人が外国に興味がなくなった」現象の一つの例として引いたのだが、この記事を読む限り、ハワイに関してはどうも、ハワイの観光産業および日本のツアー会社の「自己責任」だという気がしてならない。記事では、最近の原油高だとか景気悪化だとか、人のせいばっかにしてるけど、1997年が最高だったってことは、10年単位のトレンドの話だ。辻褄が合わない。

私は最近、ハワイの中でいわゆる日本人観光客が立ち回るところに行っていないから、ここから先は想像だけど、バブル期の「日本人おのぼりさんのお買い物旅行」を食い物にするツアーの仕組みから脱皮できてないんじゃないか?という気がするのだ。私は、もう20年以上昔に、父のお供でおじさんたちのハワイ団体旅行に付き合わされた。行く先々で買い物をさせられ、そういうところにつれていくと、ガイドもバスの運転手も手数料がもらえる、というヤツだ。おじさんたちがアラモアナ・ショッピングセンターでなにやらしている間、私はすぐ向かいの海に面した公園でぼーっとしていた。そこへ、日本人新婚旅行の団体がバスでやってきて、だーっと降りて写真をとって、あっというまに去っていった。思っていたとおりの光景で、あー、ヤダヤダ、と思い、そのあと、ハワイに行きたいと思ったこともなかった。

私なぞ、もう若くもないのに、「あこがれの島」なんてはるか昔から思っていない。黙っていてもハワイがあこがれだったのは、それこそ私の父の年代ぐらいで終わりじゃないのかな?その後、90年代半ばの円高期までは、安くブランド物を買う人々が来たというだけだ。どっちにころんでも「おのぼりさんが行くところ」というイメージが、日本人の間でもこびりついてるのではないだろうか?私のような人間ですらそう思っているのだから、若い人の間ではダサいと決め付けられていても不思議ない。

ところが、カリフォルニアに来てから、ちょっとハワイのイメージが変わった。ニューヨークからだと、カリブのいろんな島やカンクンバミューダなど、気軽に行けるトロピカルなリゾートの選択肢が多いのだが、カリフォルニアでは数時間以内で行けるのがハワイかメキシコのロス・カボスくらいしかない。*1我が家近くには、ハワイ出身の人もけっこう多くて、親しみもあるのか、バケーションをハワイのリゾートで、という人が多い。(今年はさすがに少ないが。)彼らは、もちろんアラモアナ・ショッピング・センターに行ったり、とってつけたようなフラダンスのショーを見たりとかしない。マウイやカウアイの長期滞在型リゾートで、スノーケリングしたり、船にのったり、ホエール・ウォッチングしたり、という休暇をすごす。子供がいれば、パイナップル・トレインに乗ったり、水族館に行ったりしてもいい。そういう、世界でもトップクラス規模の整備された美しいリゾートの一つ、という位置づけで、すっかり「ダサイ」イメージがなくなった。

昔の日本人のハワイ・ツアーは、ハワイ側の人々にとってみれば、さぞかし効率よいお客だったろう。でも、日本はもう先進国になっておのぼりさんではなくなってしまったんだから、そういうお客さんの嗜好の変化に対応していろいろ変えるべきところを、ちゃんとしていなかったんじゃないだろうか。

確かに、長期滞在型リゾートにも、日本人セールスの人がちゃんといて、日本人にも売っている。そういう、対欧米人と同じような感覚の売り方をしているところも、あることはある。でも、上記の記事でも「結婚式」だの「イベント」だの・・・と、どうも相変わらず、おのぼりさん向けの手法を考えているように読めてしまう。

団体旅行でなく、家族やカップルで行動し、個性的な観光地を好むというお客さん向けで成功した、黒川温泉の研究でもしたほうがいいんじゃないかな。といっても、私は実はまだ行ったことがない。黒川は、私にとっては、いつ行けるともわからない、はるかに遠い、あこがれの地、なのである。

*1:サンディエゴもいいのだけれど、カリフォルニア州内のインド人がたくさん住んでるハイテクの街、なんて、シリコンバレーとたいして変わらないからね・・・