全国版になった「プリウス」ジョークと「優等生」の話

Jeff Dunhamという腹話術師の芸がYouTubeやComedy Centralで大人気。強烈に「politically incorrect」な「Achmed the dead terrorist」みたいなノリが売りで、その中に「HammerとPrius」というジョークがある。ガソリンがぶ飲み=politically incorrectなハマーと、燃費がよいハイブリッド=politically correctなプリウスの両方をからかっている。プリウスは、「走りながら手を外に出すと車が曲がる」とか、「青いプリウスに乗っているのは○○だ」とか、そういう言われようである。おかげで、最近ウチの悪ガキは、高速を走っている間、今までのようにビデオを見る代わりに、外を走る車をみて、「あ!青いプリウスだ!」「今日はプリウスを8台も見た!」とかいって騒いでいる。

ティーンの間での「インターネット・ミーム」みたいなものか、と思っていたら、先日子供と見たアダム・サンドラー主演のコメディ・ディズニー映画「Bedtime Stories」にまで出てきた。最近の子供映画は、大人が笑える暗喩的ジョークをちりばめているものが多いが、これもその一つ。アダム・サンドラー演じる主人公はうだつのあがらないホテルのメンテナンス係、古いピックアップ・トラックに乗って、甘いお菓子を子供達に持ってくる。その妹は学校の校長先生で、家にはテレビがなく、子供達はこれまで一度もハンバーガーを食べたことがなく、「健康食品」を食べ、「エコ」を主題にした本を子供に読ませる。そして、副主人公である同僚の女性教師が乗る車は、もちろん「プリウス」だ。

ここで「プリウス」は、妹家族をとりまく、現代における「politically correct=優等生」の象徴。話の流れは、だいたい皆さんのご想像のとおりに進むのだが、後のほうの重要な場面で、今度はプリウスが文字どおり「踏み台」になってしまう場面があり、ほんの一瞬なのだが、そのときの劇場内のオトナたちの大爆笑はすごかった。

いやー、プリウス・ジョークも全国的になったもんだなー、と感心すると同時に、先日「優等生いじめ」現象について書いたが、このように「優等生」をからかったりいじめたりしたくなるのは、人間の心理に潜む普遍的な現象のようにも思う。「プリウス」がからかわれる場面で私も大笑いしながら、こりゃー仕方ないわな、と改めて思う。だって、面白いもん。だから、それと戦っても無駄で、せいぜい逃げるしかできない、と私は思っているワケだ。

それでも、これだけジョークになるぐらい、プリウスがたくさん町を走っている。シリコンバレーで大成功した大金持ちはプリウスに乗る、というそのこと自体、たとえからかわれても、面白い世の中になったものだと思う。