毎日新聞問題は「セクハラ問題」であるとの認識

当件、まだ続いております。

この件につき、署名入りで分析や論評されている方は男性が多いためか、この視点についてあまり言及されていないようなので、書いておく。

私自身も含め、毎日新聞問題は「旧メディア対ネット」の構図で語られることが多かったのだが、こちらの記事で、倖田來未さんの「羊水」発言事件との類似が指摘されているのを読み、「あ、そうか」と腑に落ちた。なぜ、私はこの件が気になるのかということが、自分でわかったのだ。

毎日新聞内で「これほど事件が長引くのは、陰で糸を引いている黒幕がいるからでは」との陰謀説がささやかれている、というネット記事もあるようだが、そう、いると私は思う。誰かというと、「主婦」である。

一連の変態記事にはいろいろあるが、一番代表的なものとしてよく挙げられるのが、「母親と息子」の話である。「おまえのかーちゃん、でべそ」という昭和古典の言いまわしがあるが、英語で「おまえのかーちゃん」をけなす言葉というのは、「でべそ」をはるかに上回るインパクトをもつ、最も下品で相手の怒りを誘うけんか用語である。「日本の母親というのは、すべからくこのようにアホで淫乱である」かのごとく、英語で書かれて世界に発信されては、けんかを売られたのと同じ。これが、個人のブログやアダルトサイトならまだ無視のしようがあるが、日本でかつては「三大紙」と言われた新聞。それも、これ一回ではない。他にも、いっぱいいっぱい、気持ちの悪い記事が並んでいる。おかあさんたちが、怒らないわけはない。

念のためここで情報を開示しておくと、私自身も、息子をもつ日本人の母親である。この問題に対して、怒っている男性は、おもに「(実際にはありもしない)日本の恥を英語で撒き散らした」ことがポイントだと思うが、女性の場合、これに「記事の中身そのもに対し、吐き気がするほどの生理的嫌悪感と、自分たちを直接侮辱されたような怒り」を覚えるという点が上乗せされるだろう。それは、私も同じである。

まとめサイトによると、事件の初期の頃、火種となった問題記事に対して、不快であるとして毎日に抗議のメールを送ったのは女性であった。女性にとってはきわめて不快な内容の記事なのだから、たとえ直接相手に触ったり脅したりしていなくても、職場に女性のヌードポスターを貼ったらセクハラ、というのと同じレベルのセクハラ行為なのだ。毎日はこれを無視したわけだが、それは女性から見れば「まー、いーじゃないの、○○チャン、こんなことぐらいで騒ぐと、お嫁にいけなくなるよー。わはは。」などとのたまう「セクハラに無頓着なオジサン」という構図に見える。

抗議行動が盛り上がったのは、2ちゃんねるの中でも「既婚女性板」*1というものらしい。また、今回、毎日の公表した自己調査の結果が間違っていた、という11年前の新聞記事という物証を図書館のマイクロフィルムから探し出してきたのも、この板の住人だそうで、すなわち「主婦」だろう。*2 *3 毎日新聞に広告を掲載している、数多くの日用品・食品・自動車・保険・携帯電話・書籍・・・などなどの会社の大事なお客様であり、家庭の財布の紐をにぎっている「主婦」なのである。

毎日の「君臨派」の頭の中では、広告スポンサー企業に電凸している人々は、「ニートのキモヲタ男」のイメージじゃないかという気がするのだが、実はその実態は「奥様方」なんじゃないだろうか。少なくとも、相当の数の「女性」「お母さん」たちが本気で怒っていて、本当にダメージのある行動をしているのはこの方たちなんじゃないか、と私には思える。*4

そして、毎日新聞の「お詫び」文面を読む限り、「日本の恥を・・・」という点については一応言及して謝っているけれど、世のお母さんや女性たちに対し、「きわめて恥ずべきセクハラ行為を行った」という認識をもって、それを真摯に詫びているようには読めない。現在に至るまでの経緯を見ても、もっぱら「ネット上の『祭り』に対する対応」ばかりを気にして、そもそもの問題は「自分の会社の男尊女卑的セクハラ意識・体制から発したものである」というコトの本質を全く反省していないように見える。相変わらず、「英語で書いたのと、ちょっと下品だったのは悪かったけどねー。まー、ジョークだからさ、大目にみてや。わはは。」と言っているように聞こえる。だから、彼女たちの怒りは収まらない。

この件は「ネットと旧メディア」構図でもあると同時に、伝統的な「セクハラ問題」でもあると思う。一昨日書いたように、普通の企業では、自社で「セクハラ問題」が起きたら、どれほどメディアに叩かれるかを骨身にしみて知っている。その意味でも、伝統的な「メディア・リスク」問題でもある。確かに、ネットがなければここまで暴かれることはなかっただろうし、過去のメディア・リスクとは対応も違わなければならない。しかし普通の企業も、既存メディアだけでなく、「ねらー」による「祭り」のリスクとも日々戦っている。ソニーが「ヤラセブログ」でひどい目にあったのは記憶に新しい。置かれた環境は、毎日だけが特別ではない。繰り返すが、問題の根本は、「普通の企業としての常識」というところにある、と思うのだ。

この件で震え上がっている他の既存メディアの方々に、私から一つアドバイスできることがあるとしたら、「もっと女性を幹部に登用しなさい」、あるいは少なくとも「社内で女性の意見に耳を傾けなさい」ということだろう。(毎日の「君臨派」の皆様から見ると、ブロガーである私は「あの連中」の一人であり、かついまや敵となった主婦の一人でもあるから、聞いてもらえないだろうけれど。)他にもたくさんある教訓の一つ、として。

<追記>
↓ 下記、トラックバックにある「extra innings」さんのエントリーに驚きました。この「20年以上前」の記事が、数日のうちに探し出されてさらされる、というのに1票。

<関連記事>

http://2channel2.blog32.fc2.com/blog-entry-286.html
2008-08-13

*1:略称「鬼女」板。

*2:もちろん、匿名なので主婦を騙っているだけかもしれないが。

*3:別のソースでは「毒女」=独身女性の板、との情報もあり。

*4:まとめWikiでは、電凸実行者の性別はわからないので、この点は私の推測である。