取材する力と、グーグルの成功譚と・・

昨日の続き。

毎日新聞という企業が今後どうなるかは時の流れに任せるとして、「エセ記者」と「ブロガー」の両方ともにスタンスを持つ私として、やや複雑な思いを持つのは、「取材を仕事にするプロ」をこのあとどうやって確保していくのかなー、という点である。

記者のまねごとをしたり、メディアの方とお話したりして、つくづく思うが、やはり給料をもらって、毎日毎日取材をするプロの記者というのは、どうしても必要な存在だと思う。片手間でやっているブロガーとしての私では、どうしてもできないことは多い。ふだんからのリサーチ、記者会見への出席、人のつながり、インタビュー先を探し出す手法、足でかせぐインタビュー。同じ記者会見に出席しても、質問の仕方やそのための覚悟が、アマチュアとプロでは違う。(プロでもヘタな人はいるが、それはとりあえずおいといて、全体のレベル、という意味で・・・)表現の仕方も、まとめ方も、プロはプロである。

専門分野の話なら、とりあえずふだんからのリサーチはある程度できているからいいとしても、取材のために駆け回るという、私の本業からしたら「効率の悪い」ことをやっている暇はない。でも、駆け回って取材することでしか得られない情報というのは多い。だから、「専門分野のブロガーがいれば、記者が書く記事は無用」ということにはならなくて、この二つは「補完関係」であるべきだ、というのが実感なのだ。

しかし、新聞業界は今後、どう転んでも縮小の運命にある。きちんとした取材技術のあるプロ(ここがポイント、現在は必ずしもそういう記者ばかりではないから・・)を、どうやって相当数、育てて食わせていくのだろうか、と思う。

だからこそ、ネットをうまく取り込んで商売として成り立たせないといけないワケだが、そこで連想するのが、「なぜグーグルがヤフーに勝ったか」というお話。

2003年ぐらいの時点では、両者の検索シェアはほとんど同レベルだった。しかし、その後ヤフーは、「広告」商売に主眼をおいて、お金になるコンテンツをそろえた「メディア化」を目指し、一方グーグルは、検索技術を徹底的に研ぎ澄ませて品質を上げた。結果として、グーグルが勝った。お客さんは賢いのである。

広告で事業を支える「メディア」のもつ、根本的な矛盾でもあるように思う。お客さんは、本来コンテンツの中身を求めているのに、商売はコンテンツの中身の価値ではなく、広告という第三の面で稼ぐという矛盾がある。かといって、コンテンツの価値をいくら高めても、お客さんがそれをお金を出して買ってくれるほどまでの単価には至らない。ネット上で有料サイトがことごとく失敗していることからもわかる。

グーグルは、たまたま「検索広告」という、きわめてマージンの高い金鉱脈を掘り当てたからよかった。では、優秀なプロの記者をかかえる旧型メディア(で、全国紙でもない地方紙とかでもいいのだが)が、本来の価値である「情報の質を高める」ということにピンポイントして徹底し、ネットに最適化した紙面にし、お金もかけて、優秀なプロの記者を沈みかけている全国紙から引っこ抜いたり、早くアクセスできるように設備も入れたり、いろいろ頑張ったとしよう。さて、それで、成功する道というのはあるのだろうか・・・?

これは思考実験で、申し訳ないが私には答えはない。ただ、ずっと思ってる疑問なので、とりあえず放り上げておきたい。