オバマが電気自動車を支援するワケ

日経ビジネスオンラインに、2回シリーズでアメリカの「電力」対策について書いた。第一回の「発電編」に続き、第二回「送電・節電」編は明日あたりアップされる予定。

これを書き終わった後に、ビンラディン殺害成功事件があったのだが、その話を聞いていて、この記事ではサラっと触れただけのオバマの一連の「環境政策」は、単なる「エコ」ではなく、別の意味があったのだろうな、ナルホド、と思った。

オバマ政権は、電気自動車推進を支援している。ブッシュのときは、いったんカリフォルニア州などが「電気自動車推進」の法律を作ってやり始めたのが引っくり返され、相当数市場に出はじめていたGMなどの電気自動車をメーカーが突然全量回収し、切り刻んで砂漠に埋めてしまったという話があったらしく、その様子は「Who killed the electric car?」というドキュメンタリー映画になっている。これがどこまで「政権の陰謀」だったのかはわからないが、映画は「石油ロビーが裏で圧力をかけた」と暗示した内容になっている。

しかし、オバマハイブリッド車などへの補助金に加え、電気自動車メーカーも支援している。トヨタも出資するテスラの車は、最近ときどき道で見かけるようになっている。

北カリフォルニアはプリウス大好きな地域で、そこに住む私は、無邪気に「ああ、エコなのね」と思っていたのだが、電力を作るための原料が例えば石炭なら、同じ距離を走るためにCO2をたくさん出すはず、考えてみればガソリンと石炭のどちらがよりクリーンなのかは「?」なところ。日経サイエンスで「州によっては、電気自動車のCO2パリティはかえってマイナス(電気自動車のほうがCO2が増える)」という記事を読んだ記憶がある。それで意味あるのかな??と不思議にも思っていた。

さて、今回の「電力」記事の第一回に、米国の電力源の分布円グラフがある(元ネタはこちらのCando Advisorsのブログ)が、米国では発電には石油をほとんど使っていない。石炭・天然ガス原子力・水力でほとんどを占める。ウラン以外はすべて自国産でまかなっている。ウランも、主要産地はカナダ・カザフスタン・オーストラリアだそうなので、おとなりで安全な友好国であるカナダから持ってきているのだろう。

しかし、車を動かすガソリンは未だに中東の石油に相当頼っている。バイオ燃料もやってみたけど、食料不足と価格上昇を招いてしまった。だから、ガソリンを減らし、電気自動車を増やせば、「中東依存度」が減る、ということになるのだ。もちろん「エコ」も目的の一つだが、「国防」との合わせ技だったから、より多くの国民の合意が得られたわけだ。

ああ、そういうワケだったのか、と初めてナットクがいった。

石油確保のために中東に介入して軍隊を動かす代わりに、補助金を出してでもエネルギーの中東依存度を下げ、自給できる電気に替えて、ちょっかいを出さなくてもいいようにする・・・ということなんだな、と。

もちろん、オバマ政権以前から、「中東依存度を下げる」というのはアメリカの種々の政策の決まり文句のようになっているし、他の環境政策に関してはこの図式には当てはまらないが、少なくとも電気自動車に関していえば、このグラフのおかげでそれが腑に落ちたのだった。

うーむ、奥が深い・・・