CTIA第一〜二日 真っ白なバス、「キャリアの本分」、KYなD社

今年も、ラスベガスでCTIA(米国最大の携帯業界展示会)が開催されている。今回は、いつもここで会う友人が何人か「今年は行かないよ」と言っているし、このご時世なので、さびしい展示会になることは予想していた。

実際にも予想どおり、静かである。去年と同じコンベンション・センターだが、使っている建物が違う(今年は南と中央、去年は中央と北)ので、人の混み具合は正確には比較できないが、やや少ない感じはする。それよりなにより、ホテルの建物全体やモノレールの駅全体を覆う広告、街灯の旗広告、バスの車体広告などの「街広告」がほとんどないので、いっそう寂しさがこみ上げてくる。

↓バス、真っ白だし

こうした街広告は、このところ数年、LGとサムスンが常連であった。この2社は、会場のブースでも大きさと派手さを競っていたが、今年はすっかり静かである。日本だけでなく、アメリカも携帯端末の売れ行きが大幅に下がっている今日この頃。韓国勢は2Gデジタル移行時には、普及型中位機種で本国の進んだ小型・高性能端末を持ち込んで成功したが、ここしばらくのスマートフォン・ブームで主導権を奪われ、「安物端末」の地位に落ち込みつつあり、苦しいところだ。

唯一元気があるのは、イケイケドンドン状態のRIM(ブラックベリーの会社)。ちょうど、iTunes App Storeの真似っこの「Blackberry AppWorld」が4/1から開始されたので、キーノートでも同社CEOが登壇。ブースは例年と同じ程度の地味な規模だったが、会場全体のうち、一番人がたくさん集まっていた。

ちなみに、この展示会は、バリバリのトラディショナル携帯電話産業の人々が集まるところなので、アップルもグーグルも出ていない。ただし、Androidについては、キーノート冒頭で、T-MobileのCEOが宣伝にこれ努めていた。

初日のキーノートは、RIMとT-Mobileと、あと一人はVerizonのIvan Seidenbergだった。そういえば、これまでのCTIAでベライゾンの人がキーノートに出てきたことはほとんどなく、特に初日のキーノートというのは珍しい。例年、初日は目玉になる派手な会社が出ることが多いので、今年はRIMはともかく、ベライゾンというのはなるほど、世の中の流れを反映しているなー、と思った。

ベライゾンというのは、アメリカのキャリアの中でも一番頭が固い、保守的、排他的、クローズド、な会社である。このため、しばしばグーグルの仮想的とされ、シリコンバレーギークたちからが一番嫌いな会社だ。しかし、キャリア出身の私は、けっこう好きなのである。「キャリアとしてやるべきことをきっちりやっている」という意味で、一番きっちりした会社だと思っているからだ。

一般的には、iPhoneで大旋風を起こし、ユーザーを増やしているAT&Tが、キャリアの中では目立つと思われるかもしれないが、iPhoneのデータトラフィックが予想どおりものすごく、もともとつぎはぎでインフラがあまりキレイでないAT&Tは、苦労しているという話があちこちで聞こえてくる。これに対し、Verizonは「どこ吹く風」なのである。オープン戦略とかいろいろ言っているが、これも自分の手の中できっちりコントロールできる範囲でやっているだけで、基本的に「限りある無線資源」をどうマネージするかに関しては、ものすごく厳しい。その上で、ちゃんとしたサービスをユーザーに提供し、ちゃんと儲ける商売をし、そのお金で設備を打ってカバレッジを確保し、700MHzの周波数を落札し、次世代LTEの設備投資も着々とやって今年終わりには限定サービスを開始するという。

サイデンバーグ氏の話し方は「もそもそ」としているし、見かけも地味だし、話の中身も派手なところはなく、メディア受けはしないけれど、彼の話を聞いていて、私などは「これこそキャリアの本分」だなー、などと感心したりする。シリコンバレーの仲間には顰蹙を買いそうだが、こういうキャリアが、「派手にもうかるテレコム」の時代が終わってしまった今、強いのだろうな・・と思ったりする。

↓地味なサイデンバーグ氏


第二日キーノートの中では、WiMaxのClearwireが、「Sillicon Valley WiMax Innovation Network」を発表。インテル・グーグル・シスコと共同で、20マイル四方の地域で、開発者がWiMaxを使ってアプリを作れるようにするという。マウンテン・ビューでグーグルがやっているWiFiネットワークの拡張版、といったところか。

さてそんな中、ドコモの長年の友人として、一言。ドコモが例年のようにブースを出していた。相変わらず何を売りたいのかよくわからないが、そこはまあいい。しかし、そろそろちょっとなんとかしてほしいと思うのが、この「ミニスカ・コンパニオン」である。

日本の展示会では、これを楽しみに来るおじさんが多いのはわかっている。しかし、アメリカの電話業界ではちょっとばかり「politically incorrect」だろう。だって、CTIAでも他のブースには全くこういう人はいない。韓国勢すら、やってない。あまりに目立つ。初めのうちは、まだ「慣れてないのねー、仕方ないね」と思ったが、もう10年以上の常連になったのだから、そろそろ空気を読んでくれないものか、と思う。