strikes back 5 大国の中のバランス
さて、世界中大不況である。パラダイスどころではない。そして、外でびゅんびゅん冷たい嵐が吹きまくっている中で、内向きだから日本はまだなんとか大丈夫だった、という論調もある。内向きでなんで悪いか、と。
実際には、子供達がおうちの中でぬくぬくゲームなぞやっている間に、父ちゃんと母ちゃん(トヨタやホンダ・・・)は、寒風ふきすさぶ中をせっせと外に働きに出て稼いでいたのだ。ところが、その頼みの父ちゃんすら、体調を崩してきてしまった。という見方もできよう。
「パラダイス鎖国」の本の中で、「日本は大国である」という点を強調した。例えばシンガポールとかアイスランドみたいな、「外」とのつながり「だけ」で生きている国とは違い、内需が十分に大きい国である。本を書くときに統計を調べてみたが、先進国の中で、GDPに対する輸出の比率がアメリカの次に低いのが日本、というのは実は自分でも意外だった。その昔、日本の学校の社会科で習った「日本は資源がないから、加工貿易で立国・・云々」という話のイメージと違っていた。それも、最近の先進国になってからの話ではない。何十年も前から、浮き沈みはあるけれど、いつもそうだったのだ。だから、例えばアイスランドは金融不況の直撃を受けて一発で沈んだが、内需の大きい日本はそれほどでもなかった。それは事実だろう。
でも、比率は低いながら、もともと図体が大きいから、輸出入の絶対額は大きい。これだけ大きな国が、外の世界と関わりを絶って生きていけるわけもない。外に出て働く父ちゃんの役割は、誰かがやっぱり果たさなければいけない。
だから、英語ができて、海外とつきあう役割を担う人は、絶対数としてはかなり必要なのだが、なんせ1億人以上の巨大な国である上、内需向けの仕事で十分に多くの人を養うこともできるので、外向けの人は比率で見ると少ない、ということになる。
日本人すべてが、外向きになれ、とは言わない。逆に、みんな内向きになるべき、とも言わない。これだけ大きな国の中の数多くの人々が、一斉に同じ方向に向くこと、あるいは同じ方向を向くべきだ、と主張することがそもそもヘンなのだ。だから「日本はこうあるべき」という言い方は、私はしないように気をつけている。
過去の一時期、教育の中で、不足していた外向けの人数を確保するために「みんな外向きになろうね」というプロパガンダを張ったこともあるだろう。それが、「貿易摩擦」の時代を経て、トーンダウンして今に至っている。それに、もはや、国定教育の中で行われるプロパガンダだけで人は動かない。
外向きの人と、内向きの人が、ある比率で入り混じっているのが当たり前なのである。どちらに向くべきか、というのは、いまや教育でもプロパガンダでもなく、自分の志向や考え方で決まる。
私はたまたま、若い頃から外向き志向だったし、この先もずっとそうだ。それなりに、面白いことをやってこれたと思う。だから、外向きの素質のある人には、是非「内向き」の周囲の傾向に負けず、「外向き」を貫いてほしいと思うし、あるいは外に何か「自分にとって」面白いことがあるかもしれないことを気づかずにいたらもったいないから、「パラダイス鎖国」を抜け出そう、ということを言っている。
特に、「手に職」をつけることが難しい文系の人の場合、とりあえず「英語」およびその他の「外国語」は有効な芸になりうる。とりあえず外国語ができれば、失業しようが出産で休まざるを得なくなろうが、なんとか食べていける。今なら、中国語などができたら、きっと需要は多いだろう。(昔は、左翼系の人しか、中国語やロシア語は取らなかったけどねー。時代は流れる。)それ専門にならなくとも、英語は世界で最もつぶしのきく万能スキルだ。技術者などのほかの専門がある人でも、英語ができることで新しく開けるチャンスは多い。
まぁ、そういうわけで、寒風ふきすさぶ中にわざわざ出て行こうという志の高い人のために、敢えて私は言い続けようと思う。