行列はできたけど・・・Blackberry新モデル3兄弟をめぐって

iPhoneのことも、G1のことも、日本のメディアがいっぱい書いているから私はあまり書く必要がないが、こちらは誰も書いてくれないので、Blackberryの話を引き続き書くことにする。

10月から11月にかけて、Pearl Flip、Bold、Stormと次々Blackberryの新モデルが発売された。このあたりを見ていると、いろんなことを考える。

まず、製品そのものの評判はどれもいまひとつ。FlipはこれまでのPearl(消費者向け)の後継、Boldはこれまでの普通のBlackberry(企業ユーザー向け)の後継であり、画面がきれいになったとか、形が折りたたみになったとか、そういう違いはあるけれど、どっちかというとマイナー・モデル・チェンジぐらいの感じ。発売元キャリアが、FlipはT-Mobile、BoldはAT&Tで、どちらもG1とiPhoneがすでにあることもあって、割と静かな船出だった。これに対して、Stormは「ポコッ」という変形タッチスクリーンが話題になり、またキャリアのベライゾンは、スマートフォンの目玉商品がないので力を入れており、発売時にはベライゾンの店に行列ができたというほど、話題になったのだが、その反動で「使ってみたら、ポコッ方式は使いにくいじゃんか!」との話が出始め、特に数日前にNew York Timesに出たDavid Pogueの散々な批評が、ネットのあちこちで取り上げられている。

Log In - New York Times

David Pogueが噛み付いているのは変形タッチスクリーンだけではなく、あちこちあり、「WiFiが使えねぇ!」というのもその一つ。

このあたりが、RIMという中堅メーカーの苦しさでもあるのだろう、と思う。iPhoneもG1も、一つのキャリアからしか今のところ出ておらず、必ずしもキャリアの意向に完全に服するのでなく、AppleGoogleという、強気で巨大なプレイヤーが、自分のやりたいことをかなり好き放題に通している。これに対し、長年大手キャリアすべてとつきあいのあるRIMは、一気に3つの主要キャリアから新モデルを出す力を持っているともいえるが、それぞれにキャリアの言うことを聞いているんだろうな・・というところも見え、例えばStormがWiFiに対応していないのは、おそらくWiFi嫌いのベライゾンが圧力かけたからだろうと思う。(だって、基本ソフトや液晶などはどれもほぼ共通なのに、他2モデルがWiFi対応なのにStormだけWiFiのってない、って不自然だよね。)3Gネットワークが弱いT-MobileのFlipでは、3Gに対応していない(EDGEのみ)。いろいろ各社、事情がおありのようで。でも、RIMとしては、巨人Apple/Googleに対して、自分の城を死守するために、キャリア寄りの路線を敢えて選んでいるのだろう。BlackberryブラウザーではYahoo検索窓がデフォルトだとか、カレンダーやアドレス帳がYahooとは同期できるなど、Googleに対抗する路線も微妙に見える。引き続き、ニッチ・プレイヤーRIMに「負けるな」といいたい私。

ちなみに、息子に聞いたら、テック・ギークの子供向けチャンネルG4でも、Stormは散々で、反応が遅いとか、すぐクラッシュするとか言われているらしい。私のちょっとだけ見た感想は、それほど大はずれではなかったようだ。とはいえ、ほめている記事もあるし、まー、それほどひどいかどうかはわからない。この前の記事にも書いたように、やせても枯れてもベライゾンが売っているから、フタをあけたら3兄弟の中で一番売れるような気がやっぱりしている。

もう一つ面白いと思ったのが、私が愛用するFlipについて、悪評の一つが「bulkyでugly」ということなのだが、例えばGIZMODOは返す刀でBoldのことを「sleekでカッコいい」とか言っちゃってるのだけれど、どうもこの感覚は私とは全く逆。他の批評でも同じ傾向が見られる。なんだかよくわからない。推測なのだけれど、ここ1−2年のスマートフォン・ブームの間に、「一体型のスマートフォンが新しくてカッコいい」「折りたたみ型の端末は、低所得者が使うベーシック・モデルでカッコわるい」という先入観が、少なくともこういうメディアに書く人たちの間には浸透してしまったのでは、という気がする。はっきり言って、街で折りたたみ電話を使っている人は、最近ではメキシカンの掃除のオバチャンとか、そういう人ばかりに見えるので、(少なくともシリコンバレー界隈においては)仕方ないようにも思う。でも、日本の折りたたみケータイも見慣れているし、使い勝手からいって折りたたみが好きな私は、Gizmodoのおにーさんたちとはちょっと違うのだ。

前に、「携帯電話と男はフォームファクターが第一」と書いたけれど、「他の人がどう思おうと、私がいいと思えばそれが一番」「惚れてしまえばアバタもエクボ」という意味で、これは意外に当たっているかもしれない、などと思う次第。