日経の「海外赴任」に関する小コラム

日経新聞の土曜版についてくる「プラス1」という別冊版がある。「お、今日は佐々木蔵之介のインタビューなんてあるじゃん」とホクホク読み、ぱらぱらめくっていったら、こんな小さなコラムに気がついた。

魅力薄れた「海外赴任」

署名は、「編集委員 小林明」さん。

ネット版には載っていないと思われるので、簡単に要約するとこんな感じ。

産業能率大の意識調査の数字を引用して、「海外赴任を命じられたら喜んで従う」という人と「できるだけ拒否する」人との逆転現象があると指摘。今の若者は、海外へのあこがれもなくなり、国内で海外の料理でもブランド品でも不自由なく手に入る。先進国ですら教育や治安の不安があり、「国際化が進んだがゆえに、あえて海外に出て行く動機も薄れたように思える云々・・・」経営コンサルタントがこう分析する。最近の若者は外出も好まず、海外旅行にもあまり行かない。20代の男女の出国率は96年から07年にかけて大きく低下している。

私の「パラダイス鎖国」をお読みいただいた方は、「ん?」と思われるのではないだろうか。少なくとも、書いた私自身は思った。

いや、別に「パクリ」とかクレームする気はない。産能大の数字はちゃんと元ネタから引っ張ってきているだろうし、この方が私と同じことを考え、同じ数字を引用して同じ話の流れになっただけだろう。パクられるほどの身分でもないので、気になるのは私の思い過ごしだろう。小さなコラムだし。

ただ・・・

  • まず、ここで引用されている「経営コンサルタント」って誰?コラムの中には、この人の正体が明かされていない。
  • それから、後半の出国率は、どこから引用した数字か、書いていない。(私の数字はJTBが元ネタ)

この二つが、私にはちょっと気持ち悪い。このコラムは、「ある大手電気メーカーの人事担当者」も「同大学」も、人名を出さずに発言を引用しているので、そういう方針なのかもしれないけれど、こうしたちゃんとした組織をバックにしていない「経営コンサルタント」は、「誰」というのがこのコメントの信頼性をバックアップするものなので、読者としては知りたいよね。

小林さま、私の本をもしお読みいただいたのでしたら、ありがとうございます。もしまだでしたら、他にもこの流れの話がいろいろ書いてあり、ご興味おありと思いますので、是非お読みください。そして、「パラダイス鎖国」に対する意識を高める記事をまた書いてください。宜しくお願いします。

<追記>
繰り返すが、私はこのコラムの中味自体や、私と同じ話の流れになったことを批判しているのではない。むしろ、日経でも同じ意見が取り上げられて嬉しいと思う。ただ、もの書きとして、引用元の明記はきちんとやってもらいたいと思うだけだ。クリエイティブ・コモンズで転載自由としたときでも、転載元は明記するように定めることができる、というのと同じ意味だ。

だから、もし万が一この「経営コンサルタント」が私ならば、著書から引用した旨、一言書いて欲しかったと思う。

もしもこれは他の人で、その人が名前を出すことを拒否しているのであれば、上記の誤解についてはお詫びしたい。