「価値感」で選ばれる政治家の「ごくろーさん」

こういう話とか・・・
2008-10-23
こういう話とか・・・
「首相は安い店に行け」 高給番記者たちの「庶民感覚」 : J-CASTニュース

を読んでいると、洋の東西を問わず、政治家を「政策」とか「政治担当能力」で選ぶ人というのが、いかに少ないか・・・という諦観が改めてこみあげてくる。

前回の大統領選挙で、結局ブッシュが勝ったときに感じた諦観なのだけれど、その背景をちょっと前に渡辺千賀ちゃんがうまく説明している。
激動の20年とアメリカの保守 | On Off and Beyond

私にとっては、サラ・ペイリンがどうしても「アンバランス」で「不自然」な感じに見えるのは、経験不足とか能力不足とかスピーチがヘタとかだけではない。ちきりんさんが仰っているように「女なら誰でもよかった」というのとちょっと違い、「女」というおべんと箱の中に、「子供が5人いる『ホッケー・マム』(サッカー・マムのアラスカ版ね)、銃で猟をするのが趣味、中絶反対・・・」といった、アメリカ保守の「記号」をめいっぱい詰め込んで、こぼれ落ちそうになっているからだ。

ソースをちゃんと貼り付けられなくて恐縮なのだけれど、先週あたりのWall Street Journalに、「アメリカのブルーカラー層白人女性の間にある根強いオバマに対する不信感が、さすがにこの不況で『何か変化を持ち込んだほうがいいんじゃないか』という気分に変わってきている」という記事があった。同じブルーカラー白人でも、男性は、少なくともその記事の時点でまだ変わっていなかったそうなのだが。で、その中で「こういった層の人々は、政策ではなく『value』(価値観)で投票する」と述べられていたけれど、それが上記千賀ちゃんの記事に書かれていることだ。

表立って差別しなくても、オバマに対し、「彼は大統領になったら、自分達白人をないがしろにするに違いない」みたいな、漠然とした不安感があるらしい。そこで、マケインは、この保守層の不安感をピンポイントに狙った「刺客」として、「女」の入れ物に「保守の記号」を詰め込んだペイリンを選んだ、というわけだ。

なるほどねー。そりゃ共和党に女性は他にもいるだろうけど、ここまで保守の記号を見事に詰め込んだ女性は、さすがに他にはいなかったんだろうなー。その上、元ミスなんたらで元女子アナ、それに共和党から出た15万ドルで買った豪華衣装を着せて、男性の気を引こうという作戦にも見える。でも、彼女はヒラリーみたいな「弁護士」とかでもなく、非エリートの庶民派政治家、というのが売りだったはずなんだけど。やっぱりどーも、無理があるような・・・

今回の候補者討論会は全部わりとまじめに見たけれど、金融危機対策にしても、外交問題にしても、もはや私のような素人には理解できない話が多すぎる。無理に理解して判断しようとしても、それが正しいのかどうか、私には全く自信がない。結局は、どっちの人のほうが安心できるか、信頼できそうか、というぐらいの判断しか、素人にはできない。その素人が大量に投票して決めるんだから、「自分と似ている」という安心感が選択理由の一番になったとしても、仕方ないと思えてしまう。

サラ・ペイリンに「似たものどうしの安心」を感じる保守層も、「庶民」というレッテルで政治家を分類しようとする日本のマスコミも、その意味では似たようなものだ。そして、それが民主主義の現実であり、どんなに理想に燃えた政治家でも、まずこの人たちからの投票を勝ち抜いてからでなければ、何もできない。かといって、「似ているだけ」では絶対困る。仕事はちゃんとできなければならない。

政治家というのも、本当にご苦労さまなものだ。人気を集める「芸人」の才能と、実務をする「仕事師」の能力と、両方なければいけないのだから・・・

なお、上記WSJの記事は、同じ保守層白人でも、家庭の台所を預かる女性のほうが、不況の影響を強く感じて不安感が強くなり、現政権共和党への不信感が強くなっていて、オバマに鞍替えする人が多くなっており、それがオバマ優勢の原動力になっている、とのお話だった。サテ、どうなりますか。