追われる者の気持ち - タタ自動車とボーダフォン

数日前の話になるが、インドのタタ自動車が、イギリスのローバーとジャガーを買収する、という話にぶっとんでしまった。今の親会社であるフォードがタタに売ることにした(タタき売り・・・?^^;)、という話。

レノボIBMのパソコン部門を買収したときもちょっと感じたけれど、これを聞いて、貿易摩擦の頃に日本を叩いたアメリカ人の気持ちはこんなだったのかな・・と思いを馳せてしまった。

昔私がホンダにいた頃、インドははるかに遅れた途上国だった。その国の自動車会社が、ローバーとジャガーという、高級車ブランド車の親会社になるワケだ。

歴史上、追いつき追い越せの下克上はいくらでもあったし、イギリスもアメリカが独立しようとしたとき戦い、その後アメリカがイギリスに代わって世界最大の強国になるのを見てきた。しかし、アメリカは一応、白人の国だし、「大英帝国」の一部でもあった。近代以来続いてきた「白人支配」のあと、日本とか、中国とか、インドとかの非白人の国が、こうしてじわじわと自分たちを追い越していくかもしれないのを見ている側は、どんな気持ちだろうか。

すでに世界の中で「大国」「先進国」としての地位を確立した日本でも、戦争とか貿易摩擦とかいろいろせめぎあいを経て現在の地位に達していて、その間、イギリスやアメリカは、その「現実」と折り合いをつけようとして苦労してきた。今、日本から新興国の追い上げを見ていて、せっぱつまった気持ちになる人も多いと思うが、当時のアメリカ人はこんな気持ちだったんだろうか、と思う。

イギリスとインドといえば、わがテレコムの世界でも、インドの存在感は徐々に増している。国際海底ケーブルのFLAGはインドの新興テレコム会社リライアンスの傘下にはいっているし、日本からは撤退してしまったボーダフォンでも、最近はインドへの進出に力を入れている。ボーダフォンでは、CEOアルン・サリン氏はもともとインド出身で、その関係もあるのだろうが、そもそもイギリスの中でも重要で世界的な知名度を持つこの会社のトップがインド人、というのもスゴイと思う。

イギリスの人は、こういう現実に、すでに折り合いをつけられるようになっているんだろうか?それとも、インド人というのは、なんだかんだ言って、やっぱり「英語圏」「大英帝国」の一部だから、まぁいいやという感覚なのだろうか?やっぱり、全くの「孤高」である日本とか、中国とかとは違うのだろうか?それとも、実は忸怩たる思いでこの話を受け取っているのだろうか?

すでに追われる立場となった日本、という立場から見て、「追われる者の気持ち」にどうやって折り合いをつけていくのだろうか、とふと思ってしまった。