AT&T vs. iPhone 携帯業界が亡霊に怯える理由

過去2回のCTIA-IT展示会リポートで、アメリカの携帯業界が「iPhone」という亡霊に怯えていることを書いた。

それから、AT&TiPhoneに関して、「ヤル気のなさ」が露骨に感じられる件も、以前書いた。

キャリア様の逆鱗に触れたiPhone? - Tech Mom from Silicon Valley

その理由ははっきり言わないけどみんなわかっているワケだが、それが推計数字で出ている記事を発見。

Technology News - CNET News - CNET

AT&Tは、iPhone加入者一人につき毎月18ドルをアップルに払っているのでは、というものだ。アナリストが、アップルの財務発表の売上げ・単価・販売数などから逆算して割り出したもので、同じアナリストが以前は3ドル(新規顧客には11ドル)と推計していたものを上方修正している。

アメリカでも日本と同様、端末にはキャリアの販売奨励金がつく。(もともと、日本はアメリカの制度を真似した。ただ、アメリカは2年契約の縛りがあり、その前に解約すると違約金を払う。)販売奨励金は、キャリアの財務発表資料をよーく読むと出て来る、「Customer acquisition cost」などという言い方で書いてある項目のほぼ全額が奨励金に当たり、最近は減る傾向にあると思うが、ちょっと前で300ドル前後だったと記憶している。が、これは販売時に一回払ったら終わり。これを、2年契約の月々の支払いで回収するのが、日本でも今攻撃にあっている既存のビジネスモデルである。

iPhoneでは、購入時の奨励金はない、と言われているが、その代わり月々の料金からあがりをピンハネされるという仕組みになっており、そのこと自体はアップルも認めている。この関係が、端末を買い換えない限りずっとなのか、時期を限っているのかにもよるが、キャリアにとっては、自分の血管の中まで侵入されてしまった感じがするだろうと思う。月々の料金を長いことかけて積み上げていくのがキャリアの強さの源泉なので、一度に払う奨励金と、月々のrevenue streamからのロイヤリティ支払いというのは、心理的・文化的に意味が違う。金額的には、AT&TARPU(顧客あたりの平均月額売上げ)はだいたい50ドルなので、この推計が当たっていれば、36%をアップルに持っていかれることになる。2年契約の間で合計すると432ドルとなり、これまでの端末奨励金のレベルから考えても高い。

CTIAのShow Daily(会場で配られる日報)で、ベライゾン・ワイヤレスのCEO、ロウェル・マクアダムスがインタビューに答えて「iPhoneの月額ロイヤリティモデルはウチのポリシーには合わないので、断った」と言っていた。AT&Tがよく承知したものだと思うし、一方で、アップルが、ユーザーがiPhoneをハックして他のキャリアのSIMカードを入れて使うことができないように躍起になっているのもわかる。

キャリアから見ると、よそ者が乱入して業界をひっかきまわしている、ように見えるのも仕方ないよなー・・・と思う。相対的にAT&Tよりは強い立場にあるベライゾンでも、アップルを力で押し込めるわけにはもはや行かないと思うので、昨日書いたように、これに対抗して別のやり方で、新しいビジネスモデルを作り出すという、健全な方向に向かってほしいものだと思う。