日本ガラパゴス なつやすみにっき(1) 「パラダイス鎖国=今川義元」説

毎年のように、子供の体験入学のために日本に来ている。昨日は、昼過ぎから東京で予定があり、地元の駅にたどりついたところで猛烈におなかがすき(時差でやたら早起きする子供につきあって、朝5時半とかに朝ごはんを食べるので・・)、昼ごはんにはまだ早かったけど、その辺にあるそば屋に飛び込んで天ざるを食べた。あー、天ざる!ニューヨークにいた頃はよく食べたなぁ。ベイエリアではまず食せない。どうでもいい駅前のそば屋でも、なんとおいしいこと・・・おととい、子供たちを連れて駅前のラーメン屋に行ったら、彼は一口食べるごとにため息をつきながら「あー、おいしい・・」「なんておいしいんだ・・」と感激しながら食していた。地元の人に言わせると、どちらも別に特においしい店でもなんでもないんだけど。

日本は食べ物がおいしい。ほんとーにおいしい。これに慣れたら、アメリカなんて住みたくないよね。腹が痛くなるかもしれない途上国のメシなんて食いたくないよね。渡辺千賀さんは、「世界のどこでも行けるように、不潔に強くなる」ことを実行しているけど、もうひとつ、「マズくて栄養も偏っているピザやハンバーガーとか、バサバサトルティーヤやドロドロ豆で毎日生活しても、腹をくださず精神もめげない」体でないと、日本以外のところに住めない。

それで思い出すのが、大昔読んだ山岡荘八の「徳川家康」のひとくだり。「今川義元はなぜ桶狭間で負けたか」というと、「美食に慣れてしまったから」。自分の城でおいしいものを食べるのに慣れ、乾飯などの野戦食にガマンならなくなり、戦いに出るのがおっくうになってしまった、とか。

アメリカでウチを離れて国内旅行に行くたびに、これを思い出す。ベイエリアやニューヨークならまだいいけど、そこを離れると本当にマズいものしかない。子供づれの旅行だとますますチョイスが限られる。大人だけの観光旅行ならおいしいレストランだけをはしごすることも可能だが、生活したり仕事したりしようとするとそうはいかない。長期のアメリカ国内出張のときは、ミーティングで出るダンボールのようなサンドイッチを「野戦食」だと思って、頑張って食して体力を保たなければならない。

日本から来たら落差はますます大きい。日本人が外に出るのがおっくうになのも無理はない。「パラダイス鎖国」現象は、「美食に慣れて出不精になった今川義元」、ということなのかも。そしたら、桶狭間で負ける、ってことか・・・