「あるある」捏造事件と「ミドルテール」新メディア
納豆ダイエットの情報捏造事件では、テレビ番組の下請け丸投げ体質、下請けいじめ体質がまたまた問題になっているようだ。
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/tv/20070201et08.htm?from=os1
悪いけれど、これを読んで下請けの映像製作会社が特にかわいそうだとは思わない。ソフトウェアだって、電話の工事だって、自動車会社だって、下請けが締め付けられる構造はどこも同じだし、自分で競争力のあるプロダクトや新しい売り先を創出するだけの才能のない会社は、言われるままにこき使われるのはある程度仕方ない。ましてや、給料が安かろうが仕事がきつかろうが、やりたい人が後を絶たない、華やかな映像の世界なのだ。そのぐらい、覚悟の上だろう。かく言う私も、地味なテレコムの世界ではあるが、クライアントの下請けをやっているワケで、その中で安くこき使われないよう、勉強したりブランド確立努力をしたり、日々いろいろやっているので、ひとごとではないのだ。
さて、この1年ほどのアメリカでのネット映像の大ブレークで元気が出ているのが、こうした下請けの映像製作会社や個人営業のクリエーターたちである。これまで、作った映像を人に見てもらうには、テレビや映画という、限られたルートしかなかったために、自分たちのやりたいことができなかったプロの映像クリエーターたちが、ネットで自由に語りだしたのである。YouTubeやRevverにアップロードしたり、自分でビデオポッドキャストの番組を作ったりすることで、映像を世に出すための敷居が圧倒的に低くなった。
シリコンバレーで有名どころとしては、テック・メディアのRevision 3や、私がひいきにしているポッドキャスト・ネットワークのThis Week in Tech(TWiT、といってもこれは映像じゃなくて音声だけだが・・)などがある。ハリウッドの売れないプロデューサー二人が制作している、コメディ・ポッドキャストの人気番組「Ask a Ninja」(忍者のかっこうをした人が出てきて、時流ネタを面白おかしく語る)は、Revverで少々稼げるようになったと思ったら、最近ついにDVDまで出たらしい。TWiTネットワークの番組の一つ、「This Week in Media」では、こうした個人クリエーターみたいな連中が出てきてギーク・トークをするのだが、彼らはこうした時流をものすごく楽しんでいて、「いまや、ボクらには無限の可能性が開けた!」と言い続けている。
http://www.revision3.com/
TWiT | Netcasts you love from people you trust
http://askaninja.com/
これらは、私の言う「ミドルテール」(恐竜の頭と、ロングテールの中間)、あるいはコメントでご指摘いただいたように頭と尾の間だから「背」、の人々である。
放送とネットの融合は「電車男型出世魚」 - Tech Mom from Silicon Valley
TWiMの連中がもう一つ、ものすごくコーフンして取り上げる話題が、「Red One」というカメラである。
http://gizmodo.com/gadgets/gadgets/red-one-camera-169222.php
私は専門外なのでよくわからないが、サングラスで有名なOakley社の創業者、当然億万長者なのだが、彼が商売というより「なんで映像プロのためのカメラは不必要に高いのだ!」との義憤から作った、画期的なプロ仕様の高性能格安ビデオカメラだそうだ。配信だけでなく、制作のほうでも、コスト面での大きな敷居だったカメラで、従来の数分の一ぐらいの値段、という価格破壊がおこる。制作の敷居が格段に低くなると期待されているワケだ。発売は今年の春か夏なのだが、昨年春に発表されてから、TWiMの連中は毎週のように騒いでいる。
今や、敷居が低くなったんだから、文句ばかり言ってないで、自分たちで好きなものを作って、最初はタダだろうがなんだろうが、まずは人に見てもらったらどうなんだろうか、とふと思ってしまう。私がここでこうしてタダでブログを書いているのだって、同じ動機なのだし。
そういうことをやると、元請けテレビ局からまたいじめられる、ということなのだろうけど、納豆のデータを捏造して、結局は社会的に葬られてしまうより、同じリスクをとるならよっぽど前向きのリスク・テイクだと思ってしまう。これって、あまりにシリコンバレー的な能天気、なんだろうか?