再び、Web2.0とインフラの制約に思いを馳せる

Geek息子(9歳)のレゴ作品


以前、私のレゴのMindstormの記事に対し、関連記事を書いてくださったRauruさんが、今回も私が漠然と考えていたことをうまく書いてくださった。

http://wordpress.rauru-block.org/?p=1337

レゴ本社の経営不振とか、レゴランドがBlackstoneに売却されていた話など、知らなかったので両方の記事ともとても参考になった。我が家では、たまたま息子がウルトラ・レゴgeekなので、世の中みんな子供達はそんなものだと思ってしまうが、実は違うと改めて認識。確かに、考えてみれば、息子と一緒にビデオゲームをしている似たような指向の友人達でも、レゴを作るのは苦手という子ばかりなのだ。

Web2.0の世界は、そもそもその定義からして、あまり広がらないのでは?という記事も以前書いた。このときに指摘したボトルネックは、参加する人間の数(=ギークの数)に限りがあるという点だったが、もう一つ、最近の「インフラただのり論」などとも関連して、「結局インフラはタダじゃない」ということもある。

Web2.0と対立する2つの世界(その1) Web2.0の世界は広がりうるのか? - Tech Mom from Silicon Valley
「インフラただのり論」は「売り手市場」への変化点---通信が値上がりする時代がついにやって来る!? - Tech Mom from Silicon Valley

テック系ポッドキャストシリコンバレーWeb2.0系の連中の話を聞いていて、ふと思う。いろいろ面白いことを考えてやっているが、その定義からしていずれもウェブ上にインテリジェンスやデータベースを置く形態なので、何をどうやってもサーバーや通信帯域にコストがかかる。オープンソース・ソフトウェアなら、かかるコストは自分の時間だけなので、キャッシュの流出はないが、Web2.0はそうはいかない。小さいコミュニティを相手にやっている間は、そのコスト負担も大したことはなく、「趣味を楽しむコスト」程度でやっていけるが、ある程度以上の規模を超えると負担しきれなくなる。広告モデルやサブスクリプション・モデルは、いずれも規模の経済が必要だから、普通はそこまでたどりつけない。だから、ベンチャーキャピタルから資金を入れて、早々に売却するというモデルしかあり得なくなる。

しかし、買うほうにも事情ってもんがある。ポッドキャスト「This Week In Tech」で先日、Yahoo!がFlikrを買って、困り果てているという話を聞いた。写真データベースだから、サーバーも帯域も喰う。で、彼らのビジネスモデルは、アップロードした写真をプリントすれば有料、というものだが、さて、あの膨大なユーザー数(正確には知らない)に対して、プリントの注文はどのくらいあるか?なんと週にたったの80件なのだそうだ。ユーザーが増えれば増えるほど、赤字が雪だるま式に増える。かといって、閉鎖すればユーザーの不満が大きすぎ、企業イメージが悪くなってしまう。Yahoo!の他のコンテンツや広告との連動をさせていくしかないのだろうが、今のところまだうまい方法が見つかっていないようだ。

なるほど、だからだーれもYouTubeに手を出さないワケだ。こっちは、動画だからもっと始末が悪い。

ネット映像配信のビジネスモデルが、ついに出現しつつある、のかなぁ〜 - Tech Mom from Silicon Valley

データセンターの需給状況はよく知らないが、通信帯域については、ここにも書いたように、これから下げ止まり→値上がりの局面にはいると私は見ているので、彼らのコスト構造がにわかに好転するとは思えない。

「ビジネスモデル」を追求しだしたとたん、Web2.0エデンの園から追放を食らう。外で生き延びて行けるのはほんの一握りの企業だけだろう。Web2.0は、エデンの園から出るべきではないのだろうと、このごろ思う。小さい規模で、ギークの間での知識の流通、コミュニティの形成がその役割であり、そのままでキャズムを超えて大衆化することはできないように思う。裾野を広げるのは、誰か他の人の役割であり、Web2.0の世界はそんな余計なことを考えずに、例えば専門家の学会のように、小さい世界でどんどん知識の蓄積を加速してトップを引き上げるのがその役割、という気がしている。ただ、それが学会などよりもはるかに多岐な分野で起こる、ということが重要なのだ、という気がしている。