PayPal vs. Felica

まずは言い訳から。少し前に、なぜPaypalをコンテンツ・ペイメントに使わないのかなー、と書いたが、実はその1ヶ月近く前のあるお客さんへの月報に、「PayPalがモバイル・ペイメントに進出」という記事を自分で書いていた。トシはとりたくないものだにゃ。

で、今日はそのPayPalがどのような形でモバイル・ペイメントを提供するか、CEOのJeff Jordan氏が舞台でPayPal Mobileの発表を行った。なるほど、アメリカ式。PayPal宛てに、送金相手のメールアドレスと金額を、テキストメッセージで送る。そうすると、PayPalからは確認の電話がその端末宛てにかかってきて、音声ガイダンスで送金の確認を行い、OKならば「1」を押して送金が完了する。

統合が進んだとはいえ、まだまだ圧倒的なシェアを持つキャリアはなく、それぞれにいろいろなエアインターフェースや端末を使うアメリカで、数多くのユーザーに使ってもらうための送受信方法としては、音声とテキストメッセージ(SMS)しかない、というのが現実だ。少なくともこれなら、どのキャリアのどの端末からでも利用できる。現在のところ、最も現実的な方法だ。すでにPayPalのアカウントを持っている人は、携帯電話番号とPINを登録するだけでよい。

利用用途は、別にモバイル・コンテンツやモバイル・コマースだけに限らない。PayPalの強みは、個人やクレジットカードを受け付けない小さい団体などに対しても送金できることだ。だから、これまでなら割り勘の支払い分をパソコンのある場所に行ってからでないと払えなかったものが、携帯電話からその場で送ることができる。これは、なかなかよい。また、慈善団体が、何かイベントをやって皆が盛り上がったところで、「携帯電話から今、寄付してください」ということができる。若年層ではテキストメッセージや、携帯からの投票などに慣れている人がすでに多いので、あまり違和感はないはずだ。

その流れで、自分の主宰する慈善団体にPayPal Mobileを早速導入した、元バスケットボールのスター、マジック・ジョンソンが登場。(なんだか、結局自分の商売の宣伝だけして去っていったが・・・)

この極めてシンプルなソリューション(=ネットワーク・ベースのソリューション、ただし端末の操作はやや煩雑)の対極にあるのが、昨日のキーノートでドコモの中村社長が紹介したFelicaといえる。こちらは、電車の改札や小売店などにリーダーを膨大な数設置する必要があり、また電話キャリアとしては全くその技術からお金がはいってこない。ドコモ自身は自分でファイナンス会社をやるからいいのだが、アメリカのキャリアはその気はないし、リーダーの設置が大変だし、まずやらないだろう。一昨日、Near Field Communicationのワークショップでも、非接触型ペイメントは、アメリカではどうもあまり受けない状況が変わってないと感じた。ドコモのソリューションは、端末の価値が非常に大きなウェイトを占める端末driven市場で、なおかつリアルベースのマイクロペイメントが日々非常に多い日本ではよいが、アメリカではPayPal型のほうが現実的だ。低コストですでに広く普及しているものを組み合わせた、なかなかよいソリューションだと思った。もちろん、似たようなことをしているところは他にもあるのだが、すでに数多くのアカウントを持ち、信用も得ているPayPalがやるというところも意味がある。

mコマースというと、限られた端末の画面でカタログを見るのが大変だとか、いろいろな点でアメリカではバカにされ続けてきたが、「支払い」という部分だけをPayPalが担う(で、メッセージ分の料金はちゃんとキャリアにはいる)という別のやり方で、mコマースが現実的なレベルに降りてきたと思った。

それにしても、毎回CTIA2日目のキーノートは黒人系ゲストが来る、というのがこのごろ毎年の通例だが、今回はマジック・ジョンソンのほか、Black Entertainment TVではヒップホップのD4L、MTVではLL Cool Jと、次々出てきて、もういいかげんにしてよ・・・ちょっとtoo much!