アンチ・パラダイス鎖国 (その7)--- 頑張れ、日本映画

昨日、「ハウルの動く城」がアメリカで売れなかった話を書いたばかりなのに、今朝この映画がアカデミー賞にノミネートされてしまったので、言い訳を書かなければいけなくなった。昨年はピクサーがお休みの年だったし、ドリームワークスも「シュレック」シリーズほどの強力な作品がなかったので、宮崎駿さん、今回もいけるかもしれない。

さて、同じく今朝、日本の劇場映画売り上げの統計が発表された。前にも書いたとおりのハリウッド映画不振に対し、日本映画は売り上げを伸ばし、全体でのシェアも大幅に伸ばした。この日本映画のシェア拡大のトレンドは、2002年以来続いており、たまたま昨年アメリカ映画がダメだった、というものではなさそうだ。

過去興行収入上位作品 一般社団法人日本映画製作者連盟

http://hogacentral.blogs.com/hoganews/2006/01/hoga_continues_.html

アメリカ映画興行成績の話 - Tech Mom from Silicon Valley

さて、せっかく日本では元気を取り戻している邦画だが、相変わらずアメリカでは全く姿を見ない。昨日書いたように、最近ではアニメさえあまり登場しなくなった。ハウルはかろうじて上映されたが、日本の売り上げで第二位、夏休みの子供の定番となっている「劇場版ポケットモンスター」はついにやってこなかった。

中国映画では昨年「HERO」がアメリカでもワイド・リリースされた。韓国映画は日本で大人気である。日本映画も香港や台湾では人気があると聞いているが、国際映画祭などでは中国や韓国に比べて存在感が薄く、今ひとつ「内弁慶」のように見える。

台湾系のアン・リー監督が撮った、ガチガチのアメリカ人映画「ブロークバック・マウンテン」は今年のアカデミー賞ダントツ候補である。さらに、中国や香港では、日本や韓国の俳優を主役や重要な脇役に据えて、これらの国でのヒットを狙った映画をどんどん作っている。日本でも、韓国の俳優や、欧米のスタッフを起用する動きがようやく出てきたが、まだまだ中国系の頑張りに比べてスケールが小さいように思う。さしあたり、「SAYURI」(アメリカ人原作、日本が舞台、中国系が日本人を演じ、日本人俳優が英語で台詞をしゃべる)のパターンを参考に、角川春樹の次回大作「蒼き狼」で中国人俳優を使って、「日本人原作、モンゴルが舞台、日本人がモンゴル人を演じ、中国人俳優が日本語で台詞をしゃべる」なんてのをやってみたら、面白いのではないかと思っている。

日本は世界第二の映画市場であり、日本だけでヒットしてもそれなりにやっていける。日本ではどんどんヒット作が出て、元気になっている。でも、国際的に存在感が薄い。まさに、「パラダイス鎖国」状態に見える。

中国では、中国系女優が芸者を演じる「SAYURI」や、同性愛を扱った「ブロークバック・マウンテン」が上映禁止になる。韓国では国内産業保護のために「スクリーン・クオータ」というのをやっていて、アメリカとの間で貿易摩擦になっている。

http://hogacentral.blogs.com/hoganews/2006/01/memoirs_of_a_ge.html
http://hogacentral.blogs.com/hoganews/2006/01/korea_reduces_s.html

こういった、旧時代的なことをやっている国に対し、日本は勝てるワケがない、と言い訳するのも癪ではないか。頑張ってほしいものである。