趣味が仕事モドキになるということ

少し前から、ヘンな意味で映画のことに首をつっこみ、英語の邦画紹介サイトをやることにした。

http://www.hogacentral.com
Middle Tailとパラダイス鎖国へのささやかな試み - Tech Mom from Silicon Valley


まぁ少々職業的興味もあるが、基本的には「趣味」の活動。でも、最近、少々仕事っぽくなってきてしまった。「映画生活」という、日本の映画情報サイトで、ブログを書かせてもらうことになったのだ。

映画情報 - ぴあ映画生活
http://blog.eigaseikatu.com/kaifu/


原稿料なし。だから、やっぱり趣味の範疇。でも、なんとなく「これ書くから、映画見に行かなきゃ。仕事みたいなもんだし・・」なんて妙な理屈を自分でつけてしまう。これまで、多忙を理由に、ほっとけばのめり込む恐れのある読書と映画は自分で封じていたのだが、これで封印が解かれてしまう。うーん、ちょっと怖い・・・

ネットの上には、こういう「素人」「半素人」の書いた無料コンテンツがいっぱいある。いわゆる、「Long Tail」だ。多少ともトラフィックのある、商用サイトで書けるようになったということは、私もついに「Long Tail」から、「Middle Tail」リーグに昇格したということかな。(「Middle Tail」は私の造語。詳細は上記エントリー参照。実は単に私がアメリカに住んでるってことが昇格の理由なのだが・・・)

昔、ウェブが流行り始めた頃、何故タダなのに、みんなこんな苦労して、ウェブサイトをつくるのかわからなかった。ブログや趣味サイトを自分でもやるようになって、最近ようやくそのミクロ経済的意味がわかってきた。

自分の専門分野で仕事として何かを売ろうと思ったら、それなりにコストがかかる。私のような、何もない宙からレポートをひねり出す「情報屋」でも、仕事としてお金をもらうには、お客さんにプロポーザルを出し、ちゃんとリサーチして中味も体裁も整えて書かなければならないし、お客さんからのreputationも気になる。中味に自信の持てないお題だと、お断りすることもある。質が低いからといって、中途半端な金額だと、いろいろな見えないコストがかかってしまって、かえって持ち出しになったりする。

それが、ネットの無料情報流通網に乗ると、「お金」「通貨」ではない、別の見返りが期待できる、ということがわかったのだ。何かをお金に交換しようとすると、その時点で「交換コスト」がかかる。情報を他の情報と物々交換すれば、その「交換コスト」がいらないので、「ハンパ」な情報でも市場に出す意味が生じる。

情報は、いろいろな形で流入する。思いがけない形をとることもある。ブログのコメントやトラックバック掲示板のレスなど一番直接的な形だし、それを通して人と出会うこともある。たとえば俳優のファンサイトをやっていると、他のファンから、見逃していたテレビ番組のビデオだの、雑誌のスクラップだのが集まってきたりする。専門でもない、ハンパな情報だけど、しっかり市場価値を持ち、見返りが手元にやってくるのだ。

交換コストの敷居よりも低いこうしたハンパなモノが価値を生む。従来はお金を使うだけだった人の趣味の時間が、何か価値を生み出す。これって、例えば蒸気機関が石油機関に代わって、今まで無駄に消費されていた熱エネルギーを、もっと効率よく使えるようになった、というのと同じことのように思う。

私一人の生み出す余剰価値は知れているが、何千万人とか何億人とかを集めたら、すごいことになる。趣味が仕事モドキになる、ってことは、スゴイことなのだ。