カトリーナへの日本からの寄付 - 「官から民へ」

1週間ほど前だったか、地元のサンフランシスコ・クロニクル紙に、ハリケーンカトリーナ向けの各国からの援助額が一覧で出ていた。日本からはたったの100万ドル。バングラデシュベネズエラと同じ額で、ちなみに中国は500万ドル、韓国は3000万ドル、産油国各国はさらに一桁多い。「ん?ほんと?」と思って欧州先進各国を見ると、フランスもドイツもイタリアも、それからイギリスは記憶が定かでないが、いずれも「現金の額」が書いていなくて、「医薬品」だの「人の派遣」だの、といった別の形になっている。ふーむ、こりゃどういうことだ??

おそらく、と私は考えた。各企業や個人が、直接赤十字などを通じて寄付するものは含まれていないはずだ。きっと、こういうものが日本や他の先進国からは多いに違いない。

すると、今朝(土曜版)のクロニクルに、「日本から驚くべき広い範囲の人から、多額の寄付が寄せられている」との記事が載っていた。A面の裏表紙に記事、A一面の左端に記事の要約と日本の地図まで載っている、かなり大きな取りあげられかただ。私の推測は正しかったのだ。

Relief donations pour from people of Japan - SFGate

While big help from a close ally like Japan was to be expected, American diplomats say they're astonished at the extraordinary scope of contributions from ordinary Japanese citizens, local governments and businesses for Hurricane Katrina relief.

米国大使館にやってきて、ポケットマネーで100万ドルを寄付した人までいたという。こういう人から、100円を寄付する小学生までありとあらゆる人が寄付を寄せている。記事はアメリカ大使館の話を取材しているが、直接赤十字に寄付している人なども数多い。

企業はもちろん、多額の寄付をしている。トヨタやホンダはそれぞれ500万ドル、他にもアメリカでも馴染みの深い企業はいずれも名前が挙がっている。

Corporate donors include not just Toyota and Honda (also $5 million) but nearly all the Japanese brand names familiar in the United States: Canon, Nissan, Toshiba, Hitachi, Panasonic, Mitsubishi, Japan Air Lines and many more. Much of the corporate giving is going directly to the American Red Cross and other relief agencies in the United States.

さらに、地震の時にアメリカからの寄付をたくさんもらったという新潟県では、各市町村や県での寄付を総額100万ドル、アメリカ大使館に持ち込んだ。「あのときは助けてもらったのだから、今度は私たちが助ける番。」

"Last year, we received money from the U.S. Embassy," explained Niigata official Haruyuki Otsuka. "In return, we wanted to give some contribution to America. Also, we suffered from such a big natural disaster, and so Niigata prefecture wants to help an area which suffered from a hurricane."

こうした金額は、「日本から」として合算するすべがないため、正確な金額はわからないが、大使館での手応えでは、総額と、寄付する人たちの幅広さは、世界でもおそらくトップになるのでは、としている。

Still, he said, "my strong intuitive sense is that Japan far outstrips anybody else."

税金の中から政府がお金を出すのでなく、草の根の人々が自分で直接、自分の気持ちに添う形で援助をする。ここでも、「官」から「民」への流れが間違いなく進んでいる。

"The public are starting to give," said Japanese Foreign Ministry spokesman Akira Chiba. "People gave a lot for the Niigata earthquake. The same thing happened after the tsunami. This didn't happen much in Japan before. I think a new sense of community is growing."

地域性もあり、クロニクル紙は、だいたいアジアには好意的な新聞である。それにしても、なんとなく嬉しくなってしまう記事だった。

ちなみに、アメリカでは寄付をするときの一つの大きな動機が「税金対策」。チャリティに寄付した分は、所得から控除できるのだ。政府でなく、「民」が直接、困っている人を助けることを促進する仕組みの一つといえる。日本ではどうなっているのだろう?