アメリカを捨てた日本メーカー、アメリカに賭けた韓国メーカー

LGのブース


今週、アメリカ最大の無線業界展示会、CTIAがニューオーリンズで開催された。過去7年ほど、毎年来ているが、一時の沈滞ムードから脱して、昨年あたりからまた入場者の数やベンダーのパーティの質が上向きになっていると感じられる。

もう毎年のことなので、今更どうということもないのだが、相変わらず韓国メーカーのブースは年々大きくなり、日本メーカーは年々小さくなっていく。アメリカの携帯電話機端末のシェアでは、ノキアモトローラの2トップをサムスン・LGの韓国勢が急追しており、低価格端末まで含めた数量シェアではまだノキアが一番と見られるが、カメラ付きやマルチメディア機能のついた中位機種ではこの2社の存在感が極めて大きくなっている。CTIAでも、この2社は大きなブースを構え、数多くの端末を展示して人気を集めている。

一方、日本勢トップのNECパナソニックは、ドコモの出資にくっついて、ここ2−3年、ようやくAT&Tワイヤレスに供給を開始して、昨年までは携帯電話機を展示していた。しかしAT&Tワイヤレスの消滅した今年は、ついに電話機がなくなってしまった。パナソニックは小さなブースにノートパソコンを出しているだけ、NECはついにブースもテーブルトップのみ、サーバーか何かをひっそりと出しているだけになっていた。

米国では、日本でKDDIが採用しているCDMAと、欧州方式の米国版GSMが併存しており、CDMAのほうが優勢である。韓国は自国でCDMAを採用している強みで、当初は韓国メーカーはCDMA方式の電話機で米国に食い込んできたが、最近はGSMにも供給を開始している。韓国は、戦略的に米国と同じ方式を採用し、かつての日本のように、国を挙げて米国進出を後押ししている。

一方、その昔アナログ方式だった頃は、パナソニックNEC富士通も、頑張って米国で電話機を売っていたが、デジタルにどの方式を採用するか混乱の続いた90年代の間に、日本メーカーはすっかり米国から姿を消してしまった。大手メーカーはドコモの方針に従い、GSMからW-CDMAという「欧州式」のmigration pathを行くことに決め、混迷する米国をあきらめて捨ててしまった。現在、辛うじて米国で電話機を売っているのは、CDMA方式の京セラと三洋ぐらいであり、また積極的に米国に進出しているのは、元気なベンチャーの多い携帯コンテンツの分野に限られている。

今回のCTIAでは、「携帯・無線と情報家電の融合」をメインのテーマに据え、キーノートの舞台が「ワイヤレス・ホーム」の中庭となり、展示会場側には情報家電を満載したワイヤレス・ホームが作られていた。しかし、情報家電を得意とするはずの日本メーカーはやはり存在感がない。そういえば1月には、私としては初めてCESに行ったのだが、あちらでも韓国メーカーのほうが、ソニーやパナより立派なブースを出していたなぁ。

まぁ、確かに日本と違って難しい市場ではあり、台数ベースでは中国に首位を譲ったが、それでも金額ベースでは米国は引き続き世界最大の携帯電話市場である。日欧に比べてまだ人口浸透率も低く、ARPUもMOUも増加しているし、コンテンツ市場もまだ成長の端緒についたばかりの米国は、まだまだ未来のある市場だと思うのだが・・・日本は国内市場が十分大きくなり、日本メーカーはもう海外に販路を求めなくてもいいということなのだろうか?

少し前のように、「日本の携帯電話は世界をリードする」と息巻く向きはもうあまりないだろうが、それにしても、世界の中で日本の携帯関連企業がこれほど惨めな状況にあり、このギャップが年々拡大しているということを、当事者以外の日本の方々はあまりご存知ないのではないだろうか?