突破する力 - スティーブ・ジョブスとホリエモン

なんだかんだ言って、シリコンバレー最大の経営者スターといえば、ジョブスじゃないだろうか。アップルを立ち上げただけでもすごいことなのに、追い出されてからピクサーで映画界の勢力図を一気に書き換え、さらに古巣アップルに戻ってiPod現象を巻き起こした。

iPodがこれほどの社会現象になったのは、デザインや機能だけのせいではない。ダウンロード・サービスのiTunesとセットでやっているからだ。そして、iTunesが画期的だったのは、それまでデジタル音楽のネット配信を渋っていた大物アーティスト達を説得して、iTunesに提供させたことである。

背景としては、ナップスターがあった。このために、音楽業界が生き残りぎりぎりの瀬戸際に立たされるほど、屋台骨が揺らぐほどの大ショックに見舞われ、ゼロになるよりは有料ネット配信を、という話になったのは自然の流れではある。

しかし、iTunesのアイディアを持って行ったのが、ジョブスでなかったら、どうだっただろう。彼の過去の実績や人望と、音楽のデジタル配信をやろうという熱意、それを裏付けるDRM技術の3つがそろわなければ、壁を突破できただろうか。きっと音楽業界は、今でもぐじゃぐじゃと、ファイル交換ユーザーが悪いと、愚痴をこぼしていていただけだろう。

さて、われらがホリエモンである。何か新しいことを起こしてくれるのだったら、私も別に文句は言わない。しかし、映像コンテンツのネット配信を阻んでいる壁は、要するにDRM問題、著作権問題なのだ。それは、フジテレビをぶっつぶして突破できるような安易なものではない。彼は、ジョブスが壁を突破したときに武器にした3つの要素のうち、たぶん熱意の部分しか持っていない。

パンドラの箱は開いてしまった。過去の映像コンテンツは「ロング・テール」商売として、ネット配信されるべきだ。それは私も賛成だ。でも残念ながら、ホリエモンでは突破する力が不足しているように思う。

<参照>
テレビ映像の「パンドラの箱」 - Tech Mom from Silicon Valley