発達障害のサイエンス

このところ、たまたま立て続けにこのあたりの話を人としたので、ちょっと我が家の息子のセラピー状況をまとめておくことにする。

これまでの経緯は下記のカテゴリー参照。我が家は二人の息子(現在上は高校生、下は小学生)が両方とも、それぞれ問題を抱えていた。長男は症状としてはディスレクシア的だったが、ビジョンセラピーで乗り越えている。そのあたり、経過は下記を参照されたし。
[発達障害] - Tech Mom from Silicon Valley
[学習障害] - Tech Mom from Silicon Valley
[視覚発達障害] - Tech Mom from Silicon Valley

次男は、広汎性発達障害と一応診断されているが、ADD的なところもsensory processing disorder(感覚処理障害?日本語の正式名称は知りません)的なところも混ざっている。最初に手をつけたのは「聴覚処理障害」の一部で「ハイパーアキューシズ」と呼ばれるもの。そのあたりはこれまた過去の経緯参照。
[聴覚発達障害] - Tech Mom from Silicon Valley

その後、聴覚以外の部分での問題がどうしても解決されず、病院では診断以外の何もできず、結局近くのクリニックで「EEGセラピー」というのを実施。(これは医療行為でなく、「教育」とカテゴライズされる。)脳波を測定しながらパソコンでアニメ映画を見て、脳波がある程度の範囲を超えて上下すると、アニメ映画が止まってしまう、という仕組み。脳波が極端に低下(ボーっとする)や上昇(コーフンする)すると視覚化されて、自分で深呼吸をするなど、意識して脳波の働きを通常レベルに戻す。

前回の記事に書いたような「脳のアイドリング・レベルを上げる」という全体的なものに加え、特に弱い部分をターゲットにする。最初の検査で、彼の場合は脳のうち、後頭部の右側(人とのコミュニケーションを司る部分、ここが弱いとアスペルガー症状が出る)と、真ん中の部分(感覚を受容する左脳=I/Oと、それを処理して行動の司令を出す右脳=CPUを結ぶ通信回線、ここが弱いと感覚処理障害となる)の働きが特に弱いことがわかっていたので、この部分を読めるところに計測ノード(というのでしょうか??)を貼りつけて、トレーニングを行う。徐々に効果が出てきたかな、と感じ始めたのは10月頃。セラピー開始後約1年弱。

脳波トレーニングの効果がようやく出てきたみたい - Tech Mom from Silicon Valley

その後、PACEという集中力トレーニングを続けている。こちらは、短期メモリー、集中力の維持、音と字の結びつき、といった部分を、レベルを徐々にクリアしていくゲーム的に仕立てたトレーニング。いろいろなものがあるのだが、例えば上下左右に向いた矢印がランダムに並んでいる表を「右、左、上・・」などと順番に読んでいく、などというのは、以前長男がビジョンセラピーでやったものと似ている。目的が違うのでやり方が少し違うが、共通の要素があるようだ。

次男は、この矢印のものや、縦に並んだ一桁の数字に「2」を足した答を次々と読み上げていく、といったものが超苦手で最初のうちは苦労していたが、3ヶ月ほどやってきて、だいぶ慣れてきた。(余談だが、なぜか暗算の足し算・引き算が非常に苦手で、未だに指折り数えないとできない。一方、掛け算は日本語で九九を覚えたのだが、詩のように語呂の良いものを暗記するのは得意なので、掛け算・割り算はクラスでもトップクラス。この訓練で足し算の暗算もできるようになったら嬉しいと期待中。)

行動面では、秋の先生との面談のときには、だいぶよくなってきたものの、未だに集中ができないことが多く、できていないことを指摘されるとフラストレーションから「死んだほうがまし」といったネガティブなことを言うことに先生方は懸念を示して、サイコロジストを紹介されたりした。家ではそんなことはないので、あれは演技だと私は思っているのだが・・

まぁでも、ほんの少しでも進歩があると、急に光が差したような気がするのが母親というもので、今日も今週末締め切りのプロジェクトのための文章を少し書かせたのだが、自分で時間を決めて、携帯電話でアラームをセットし、その時間になったら作業を始め、ちゃんとしたフル・センテンスで自分の考えを書き下し、スペルもかなりできた。(スペルチェッカー使用、ほんの5行ですが・・(^^ゞ)書き終わったら、友達に電話していい、というインセンティブがあったというものの、それだけでも今日の私はなんだか気分がよい。

相変わらず、果たしてセラピーの成果なのか、単に成長しただけなのか、はっきりと判断がつくわけではないが、発達障害学習障害の「脳のはたらき」というサイエンスとしての分析と、それをもとにした対策という分野は、引き続きとても興味深い。

@kuboyumi さんの話によると、例えば自閉症の人の就業支援体制といったものは、実はアメリカより日本のほうが優しいといった事情もあるようで、何でもアメリカのほうが良いということではないらしい。こうした「社会面」でのサポートも引き続き必要なのだが、発達障害の人を「仕組みのほうをやりくりして受け入れる」のと並び、「サイエンスやIT技術を活用して、現在の仕組みの中でもなんとか機能できるようにする」というのも必要。「スポーツのトレーニング」と似たような感覚で、アスペルガーADHDの人が自力で普通に、既存の教育や職業のシステムに適合し、彼らの抜群の集中力やクリエイティビティを発揮できるようになれば、本人たちも幸せだし、また社会のイノベーションもますます進んでいくはずだと思っている。