「グレード別周波数ライセンス」のススメ - オークションは怖くない

総務省では、光の道戦略大綱というのを発表し、光の道の話はともかくとして、その中で「周波数オークションについて検討を開始」という点を盛りこんでいただいたらしい。私の以前からの主張の方向に踏み出していただけそうで、大変嬉しい。

ただ、現時点ではオークションに関するパブコメを募集しても、ほとんど賛成意見がないという話を、先日友人から聞いた。え?どのパブコメ?気が付かんかったな、残念!私も書けばよかった!うーむ・・

まぁたしかに、この前のエントリーで書いたように、今の時点でオークションをやっても、上手く行かないと予想される要素は確かに多く、また「公平・迅速」という以外のメリットがないことは確かだ。米国や欧州とは、タイミングも動機も異なる。電波の話は、一般ユーザーには理解しづらく、一方理解している中の人は、それぞれに自分の会社や組織の利害を背負っているため、反対に回ってしまうのは仕方ない。

それでも、「公平・迅速」というメリットのためだけでも、ニポン国の将来のために、できるように制度設計を早く始めるべき、運用や制度設計でなんとかなるのでは、というのが私の主張なわけだ。

で、相変わらずごまめの歯ぎしりながら、例えばこうしたらもっと盛り上がるのでは、という思考実験をこの友人とともにしてみた。

例えば、私などが主張しているように、700MHzをかき集めて3ペアのライセンスが出せるようになったとする。(思考実験だから、なんでもありね)そのまま同じ条件でオークションしたら、既存3事業者で分けあって終わりなので、面白くない。では、その3つのライセンスに「免許条件」を少し違えた「グレード」を作ったらどうか。

前の記事に書いたように、「参加資格」のほうにグレードをつけると、いろいろ問題がややこしくなる。それで、「出品する品物」のほうにグレードをつける。たとえば、米国700MHz免許の例を参考に、一つだけ米国の「C」ブロック同様、「オープン端末」を義務付ける。平たくいえば、「A」「B」ライセンスを落札した人は、今まで同様にSIMロックつけてOK。「C」だけは、SIMロックフリーにして、どの端末でもつなげられるようにする。さらに、このCは、現在周波数を使っている放送中継用マイクとぶつかるところに設定し、落札者はその設備を他の周波数帯に移すための費用も負担しなければいけない、とか加えてもいいかも。

応札する事業者からすれば、「A/B」のほうが魅力的なので、高い値段を出せる。「C」は既存キャリアとしてはイヤなので、競争があまりなく、安く手に入る。下位キャリアや新規参入が参加しやすい。アメリカ向けに作られたスマホタブレットなどを輸入して、好きなものをつなげられる。MVNO様歓迎。新規参入は料金も安くないとなかなかお客が取れないのがどの事業でも宿命だが、もともとライセンス料が安いのでそれでも構わない。

上記のような事業者内のコスト構造だけでなく、「SIMロックフリー」ということでユーザーにもわかりやすい。

もちろん、上記のように上手くいかない可能性もあるが、アメリカでは少なくとも、「オープン端末義務」のついた「C」は他よりも安かった。なにしろ、オークションという制度をベースに、頭を使ってうまく運用設計すれば、従来できなかったバラエティをつけることもできる、という点をご理解いただければ幸いである。

もうそろそろ、みんな横並びで同じという世界は終わりでもいいんじゃないかと思う。

なお、この件に関しては、米国にも欧州にも新興国にも、膨大な過去のノウハウの蓄積があるのだが、意外に関係者が外国の事例について知らず、悪いウワサだけを聞いて怖がっているように感じている。必要がなかったから、なのだろうが、事情を詳しく理解すると、意外に「オークションは怖くない」ということがわかるとおもう。「諸外国の例」を調べるのは皆様お得意なはずなので、ぜひ、過去の例を参考にして、日本に最適な仕組みを設計してみてほしいと思う。どうせ、当面は検討するだけで、始めるのは10年後なのだろうから、たっぷり時間はあるはずだ。