電波鎖国するとiPhoneが日本で使えなくなる

引き続き、700MHz周波数割り当てについて。

総務省周波数委員会「700/900MHzペア」で利用の方向も、大臣発言に配慮して変更余地残す | 日経 xTECH(クロステック)
BLOGOS(ブロゴス)- 意見をつなぐ。日本が変わる。

「携帯電話等周波数有効利用方策委員会」の報告内容を全部読んでおらず、上記の記事の情報だけをもとに書いていることを断っておく。(報告書がネットで公開されているかどうか、調べていないので不明。すいません、今ちょっと忙しくて・・)

要するに、「すでに使っている人がいるので仕方ない」「それをどかす交渉をしていたら時間がかかってしまう」「国内メーカーのコスト構造に関しては問題なし」という3点がポイントのように思える。

最初の2点については、私もそんなことは百も承知で、たとえサービス開始を遅らせても、長期的には、今頑張って既存保有者の方々と調整して他に移ってもらう苦労をするほうが、先々もっと重大な苦労するよりいいと思うので言っている。こんな話は日本だけじゃない。アメリカでも今、通信業界と放送業界で電波の取り合いをしていて、FCCのジェナコウスキ委員長が今週NAB(放送業界展示会)にて、「みなさんも、みんなでオークションに参加して、新しい周波数で新しいマルチキャストのサービスを作りましょう」というアジ演説を行う(ただよこせ、じゃなくて、いろいろ仕掛けが必要ということだ)。

最後の点については、そりゃそうだろう、日本しか商売してない国内メーカーなら、どっちでもいいに決まっている。

でも、ユーザーの視点から見たらどうだろう。一番シンプルに言えば、日本だけ孤立した周波数を使うと、iPhoneiPadのような海外発の端末が、日本で使えなくなってしまう。アップルが対応してくれればいいが、してくれないかもしれない。もし対応しても、日本だけ特別なチップを使うなら、値段が高くなるだろうし、また後回しになって、何年もたたないと日本では発売されないかもしれない。なんせ、加入者数でいえば、日本の加入者数は世界のわずか3%になっちゃったのだから。

http://wirelesswire.jp/Global_Trendline/201004011200.html

3Gでは、世界各地で(アメリカの含め)いろいろ苦労しながら調整し、なんとか共通周波数・共通方式に統一されてきた。そのおかげで、日本のiPhoneユーザーはアメリカやヨーロッパでもiPhoneがそのまま使えるし、それほどのタイムラグなく日本でも発売される。価格も、アメリカと日本でそれほど違わない。そのおかげで、同じiPhoneというプラットフォーム上で、日本の頓智・のようなベンチャーも、世界で活躍することができる。

それは、決して「当たり前」の世界ではないのだ。水面下で、長年にわたって喧嘩したり妥協したり陰謀したりしながら、世界のキャリアが苦労して同じ周波数にまとめたからだ。その共通の「広い地平面」がなければ、そもそもiPhoneという商品自体、可能にならなかったのだ。そのあたりの話は、上記WirelessWireの次の回で書くので、来週読んでほしい。

ようやく、苦労してここまで来たのに、次の世代で時代に逆行して、今までの努力を水の泡にするのはおかしいと思う。

LTEは欧州では2.6GHzという別の周波数になりそうで、こちらでも時代に逆行しているのだが、とりあえずこのあたりの欧州のポリティクスについてはこれから勉強してみる。でも、とりあえず米国と同じ700MHzにしておけば、世界でも特異な「高ARPU・高付加価値」市場である米国と日本で歩調を合わせることができる。上記の記事でも言っているけれど、世界の中で見ると、米国と日本は「似ている」のだ。少なくとも、米国と歩調をあわせておくことにはそういう意味があると思う。