夏野さんの「バカ企業」を叱る本

ウェブはバカと暇人のもの」に続く、ネット商売「バカ」シリーズ第二弾、「グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業」(どーでもいいが、幻冬舎新書ではこんなに長いタイトルが許されるのかっ!!アスキー新書は8文字までっていわれたぞ!)。こちらは、わがケータイ業界の有名人、iモードの夏野さんが書いておられる。

グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業 (幻冬舎新書)

グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業 (幻冬舎新書)

夏野さんは、日本で数少ないネット関連商売の成功者だから、「おまえら、みんなバカ」と言いたくなる気持ちもわかるし、そういうことを大きな声で言える夏野さんのような存在は大事だと思うので、冒頭から「おまえら、みんなバカ」風が吹き荒れるのはじっと我慢して読み進む。

そうすると、本書の中で「ネットはツールに過ぎない、もともとの自分の商売をきちんとやって、その上でネットをどう使うかかんがえなきゃダメ」とか、「リーダーが全体最適を考えてリソースを配分しなければ、部門ごとの個別対応ではネットなどの大きな変化に対応できない」とか、当たり前といえば当たり前だが、実はなかなかできていない部分をきちんと叱っている。

この本の中で私が一番共感したのは、「回線速度向上に対する無用の期待」という小項目だ。これは、以前このブログに書いた、「ジャンボジェットは儲かるけど、コンコルドは儲からない」という話とも通じる。通信事業者にとって、「これ以上加入者を増やすこと」ができなくなってしまい、「回線速度を上げること」の価値もそろそろ頭打ちになった、という時代の認識であり、ではどうすればいいか、というのは私としてもずっと考えていることで、まだ結論は出ていない。将来、アクセス回線部分の容量とコストを同時に劇的に向上させるような新しい技術が登場するまで、どうやっていくのか、皆いろいろと試行錯誤しているところで、夏野さんも同じ方向に考えておられるようだ。ただ、この項目はちょこっとそれを言い放っているだけではあるが・・・

全体的には、やはりご自身が手がけられた「eコマース」に関する部分が、実例含めて一番詳しい。(iモードによるコンテンツ配信は、私的には「eコマース」の一種だと思っている。)その部分と、「バカと暇人」にも書かれている「メディア」としてのネットの話が主たる内容。私が興味を持つ部分は・・というのは「バカと暇人」のエントリーと同じなのでそちらを参照。

しかし、こういう本が出るということは、夏野さんに叱られるべき、「ネットに対する認識がこの程度」という経営者が世の中には多いのかな・・と思うと、ちょっと暗澹とした気持ちになる。

「バカ」シリーズ2冊で、ネットを商売にするにはどうするかというギリギリとした話を読むのにちょっと疲れたので、前に読みかけで放ってあったDon Tapscottの「Grown Up Digital」を再度読み始め、シリコンバレーの能天気な論調で、現在疲れを癒し中。