「ネットによるクラスター化」と「40代女」の実力

パラダイス鎖国」本に、「ネットによるクラスター化」の話を書いた。簡単に言うと、「ネットがあれば、同じことに興味を持つ人が集まり、議論したり行動に移したりすることが、リアルだけの場合と比べて格段に簡単にできる」ということだ。環境問題、教育問題などといったマジメな運動はもちろん、例えば「ぬれ煎餅」の銚子電鉄の話が、2Chで語られるうちに、支持者が集って電車内の吊広告をまとめて買うという支援にまで成長した例のような、楽しい例もある。この種の「草の根活動」は、欧米の人はネットがなくても割りに抵抗なくやるのだが、シャイな日本人には敷居が高かった。だから、「ネットによるクラスター化」現象は、欧米人よりも日本人にとってインパクトが強いのではないかと思っている。

そんな楽しい話がまた一つ飛び込んできた。後輩の女性(アメリカ在住の日本人)が、子供のころ好きだった「バスター(Buster)」というイギリスのロックバンド(というより、当時は「アイドル」)のメンバーとMySpaceを通じて連絡がとれたことをきっかけに、30年ぶりに熱が復活。このメンバー(ギターのロブ・フェンナ)は、MySpaceにBusterのページを作っていたのだそうだ。それで、彼女はファンクラブを作り、有志を募って日本語に翻訳したサイトを作った。同好の士が集るうち、日本での「再結成公演」を望む声が高まり、仲間の一人の人脈を通じて日本のレコードレーベルと連絡ができ、彼女はフェンナ氏のレコード会社との間を取り持って、ついにCDの発売までこぎつけた。

まさに、ネットがなかったら絶対できなかった類の「クラスター化」の事例として、すごく面白い。

そして、そういう活動をなんらかの「実績」につなげるかどうかの分かれ目のは、結局はその人の人望や実力。ただ単に、わーわー騒いでいるだけなら誰でもできるのだが、そうやって集って騒ぐエネルギーを結集して、人脈をうまく作り上げ、コーディネートする力がある人がいれば、それがさらに面白い結果につながる。彼女の場合も、長いこと仕事を通じて培ってきた「実力」がモノをいったのだと思う。

アメリカでは、40代あたりはよく「ミッドライフ・クライシス」と言われ、男性ならば、それまでマジメだったのに突然大型バイクを買って暴走を始める、などといった現象がある。(身の回りの事例としては男性の話として聞くことが多いが。)日常の生活が安定する一方、どこかにたまった過剰エネルギーが突然噴出する現象なのだと思うが、私も同じミーハー趣味を持つ子持ち・40代・女として、「ミッドライフ・クライシス」が、この後輩のような形で「噴出」するというのが、とても共感できる。こういう建設的なミッドライフ・クライシスなら、いいよね。

そのあたりの経緯が、こんな記事になっている。
ライフ - 毎日新聞

Busterといっても、なんせ70年代だから、まだ生まれる前の話で、知らない人も多いだろう。彼らの代表ヒットは「すてきなサンデー」↓

CDは下記の3枚。

すてきなサンデー

すてきなサンデー

夢みるバスター

夢みるバスター

青春に拍手/バスター・ライブ

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