Xboxの「真の敵」とは?

いろいろな事情を経て、我が家にXbox360がやってきてから2週間ほど。もちろん、メインユーザーは小学生の息子。その様子を見ていると、「ふーむ、実はコレって、すごいもんじゃないか・・・」という思いが私の中でどんどん育ってきている。

相変わらず、日本では任天堂が賞賛されている。WiiもDSも大人気。アメリカでも、Wiiは「店で品切れ」だとか、「大人でも楽しめる」とか、メディアの話題を常に集める。Wiiは「ゲームを敵視してきた人々」(メディアも含む「大人」たち)に対するゲーム業界の「太陽(北風じゃなくて)政策」として、大成功を収めており、そのコンセプトは正しかったと私も思う。

ところが、ゲーム好きの息子に言わせるとWiiは散々である。全然面白くない、という。息子の友達で、Wiiを持っている子は、私の知っている範囲では一人しかいない。品切れで手に入らないという面もあるのだろう。しかし、その少数派の一人の子は、使ってみて「やっぱりつまらない」と言っている。

なぜかというと、「Wiiはその場にたくさん人が集まってやらないと面白くない。一人で遊んでもつまらない」からだそうだ。確かに、「一人で陰々とゲームにはまる」というネクライメージを打破する「太陽政策機」としては、家族や友達が集って盛り上がる場面がウリだし、テレビCMももちろん、そういう場面ばかりが登場する。しかし、実際にそういう場面が、日々の生活のうちどれほど存在しうるかというと、実はそんなにないのである。夕食が終ったあと、毎日家族みんなでゲームで盛り上がる、ということが可能だろうか?子供もお父さんもお母さんも、それぞれ事情があってやることは多いので、みんなで集れる時間は週末ぐらいしかまとまってとれないだろう。お友達を集めて、というのは手間暇がかかる。おけいこごとやスポーツのスケジュールの合間を縫い、だれがどこまで車で送迎して・・というロジスティックスが大変だ。みんな、忙しいのだ。

あんなに売れているWiiというのは、誰がどこでいつ使っているのだろう・・・?私のいる環境が特殊なのかもしれないが、なにせ、実際のユーザーをまだ見たことがない。

これに対し、なぜ息子がXbox固執するかというと、「みんなが持っている」からであり、さらに「みんなとネットで一緒に遊べる」からである。「みんなが持っている」というコトバは、親にとっては呪いたくなる決まり文句なのだが、この場合には二つ目の「ネットで遊べる」というファクターもついてきて、より真実味があるからますます厄介だ。

Xboxには、Xbox Liveのサービスがセットになっていて、月額10ドルぐらいを払って会員になる。そうすると、息子のいう「みんな」がやっているHalo3で、友達と一緒に遊べる。それも、ただ画面で一緒に登場するだけでなく、付属のヘッドセットで話をしながらできる。Halo3といえば、バンバン撃ち合うだけかと思っていたが、昨夜見ていたら、クラスメートと3人で、「おーい、誰か手伝ってくれ」とか言いながら、協力して障害物の多い迷路を通り抜けるゲームをやっていた。

車社会で人が拡散して住んでいるアメリカでは、車を運転できない子供は極めて物理的に不自由。夜8時、ようやく友達がお稽古事などを終えて集れる時間に、ネットでちょっと遊べるというのは、ライフスタイル的にうまくできた仕組みである。まさに、Facebookと同じような、「リアルな人間関係の拡張」なのだ。お友達を集めて固定化する「バイラル効果」という意味でもまさにSNSである。日本なら「モバゲータウン」的な位置づけということもできる。

しかも、「音声チャットしながらオンラインゲーム」というのが「キラーアプリ」であるから、必ずネットにつなぐことになり、その上に他のものも載せることができる。ゲームはもちろん、HD映画もダウンロードできる。早速、HD版の「トランスフォーマー」をダウンロードしてみた。ダウンロードに時間がかかることやハードディスクの容量などいろいろ問題はあるものの、「おまけ」機能としては悪くない。

Wiiにも、ネットで天気やニュースが見られるとか、クラシックゲームをダウンロードするなどの機能はあるが、どうも「Web1.0」的、一昔前の「ポータル」と「eコマース」の発想のように見えてしまう。「大衆的」な「大人」相手なのだから、仕方ないんだろうけれど。「Web2.0」的なネット特有の力というのは、マスメディアの「伝播性」と、通信の「双方向性」の両方を兼ね備えた、中間領域にある「マイクロメディア」という、これまで全く存在しなかったコミュニケーションの仕方だと思っている。だから、いわゆる「ネット家電」として見ると、Xboxはそれをうまく取り込んだ、スグレモノであると私の目には映る。

そうやって見ると、Xboxの真の敵は、必ずしもWiiPS3だけでなく、「テレビの近くにあるメディア箱」として、例えばAppleTVもそのひとつではないかと思う。対象とするユーザー層が違うので、直接対決しているようには見えないけれど。特定の層に関しては、Facebookよりも強力な「SNS」でもある。

私はゲーム業界のことも知らないし、自分でもビデオゲームはやらない。だからゲームソフトの優劣もわからない。この感想は、「ゲーム機」として、というよりも、あくまで「ネット家電」としての評価である。そして、ユーザー層がある程度限られる(ゲームファンだけだし、だいたい男の子ばかりだし)ために、売上げとして他を圧倒するわけではないかもしれないが、「おもてなし」的に見ると、機能の統合がユーザー向けによくできたスグレモノ、と思うワケである。

<追記 4/13>
上記の映画ダウンロード機能について。やってみたら、いわゆる「テクニカルな機能」の部分じゃなくて、「課金の仕方」が全然ダメダメ。買取じゃなくて「レンタル」方式なのだが、いったん見始めて途中で止めると、あとでそこから見るということができず、もう見られなくなってしまう。最悪。オススメしません。