ヤフーとマイクロソフト - シリコンバレー対シアトルの「骨肉の争い」

ヤフーとマイクロソフトの話の分析は、いっぱいネットに出ているので、真面目な話はそちらを読んでほしい。例えばこれなど・・

Life is beautiful: Jerry Yangがプライベート・エクイティと話しているという噂

私がこの話を聞いて最初に思ったのが、「ヤフーといえば、最近不調とはいえ、シリコンバレー・ネットカルチャーの象徴的存在の一つ。シアトルの軍門に下るのは耐えられないだろうな・・・」ということ。

私もニューヨークからこちらに移って来て初めて知ったのだが、このシリコンバレーとシアトルのライバル意識は、近親憎悪といおうか、日本と韓国みたいなもんといおうか、見かけは似てるくせに性格が大幅に違う兄弟同士の骨肉の争いみたいなもので、相当に根が深い。

スターバックスのコーヒーはゼッタイに飲まず、ピーツ・コーヒー(Peet's Coffee)というバークレー発のコーヒーチェーンに行くのがシリコンバレーギークの伝統流儀だ。さすがに今ではスタバが勢力が大きくなっているが、それでもすぐ近くにピーツが並んでいることも多く、ミーティング場所を指定するときはスタバでなくピーツにする、という人が多い。もちろん、ブラウザーIEでなくFirefoxでないと、プレゼンでブラウザーを使うときにちょっと恥ずかしい。

しかし、当然両者は仕事の上では関係が深く、サンフランシスコとシアトルの間は、ロサンゼルスに次ぐぐらいの頻度で飛行機が飛んでいる。サンフランシスコから乗ってシアトルに着くと、空港がなんとなく、シーンと静まり返っているような印象を受ける。シアトルの街中で出会う人たちは、薄手のVネックセーターとか着ていて(ウチの近所ではまず見たことがない)、物静かな感じの人が多い。ミーティングでは、スターバックスのコーヒーが「箱」(取っ手と注ぎ口がついている)でエンドレスに出てくる。曇りや霧雨の多いシアトルの街に、コーヒーがよく合う。街の色彩も茶色や濃い色のイメージで、日本人には安心感のある落ち着いた街だ。MSは郊外のレッドモンドにあるが、ここは木がうっそうと茂った静かな郊外で、ちょっとニューヨーク郊外の東海岸の町を思い出す。で、また飛行機に乗ってサンフランに帰ると、極彩色でみんなメッチャクチャな格好をしていて、騒がしくて、やしの木が立っていて、コーヒーよりもジャンバ・ジュース(スムージーのチェーン店)が欲しい気分になって、私などは「あー、帰って来た」とホッとするわけだ。

先日(この話が出るだいぶ前)ヤフーの人と話していて、「ジェリー・ヤンが帰ってきてどう?」と聞いたら、「メディアだエンターテイメントだという騒ぎが終って、ネットギークの世界に戻ったのでホッとしている人が多い」と言っていたのを思い出した。ヤフーには、前CEOテリー・セメルの「ハリウッド(=南カリフォルニア)」文化も体に合わなかったということだ。

会社のDNAというのは、根深い。MSに対するアレルギーというのは、単なる「成功者に対するやっかみ」や、「ネットスケープを潰した恨み」だけではない。シリコンバレーギークから見ると、はむかうものをばりばりなぎ倒す、軍隊のようなマイクロソフトの文化は体に合わない、と見える。しかし、MS自身は自分をもはや「勝ち組」と認識しておらず、「グーグルに追いつけ追い越せ」の立場にあると見ている。どちらが正しいかは見方によるが、ともかく両者には相当のギャップがある。(中嶋さんによると、「9時5時のサラリーマンになってしまったMS」という面もあるようだ。)

コンサルタント的な、文面にした戦略で言えば、MS+Yahooは理にかなっているのだろうが、DNAの違い(+それに伴う人材の流出)というマイナス面を上回る効果を出すことができるのかどうか?いっそ外国企業とかならやりようがあるが、なまじ「近親」だけに、微妙な難しさがある。ジェリー・ヤンが、他の買い手をさがしているというのは、よく理解できる。

<追記>
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