またまた「視覚問題」が - 「聴覚」プラス ビジョンセラピー

我が家の子供たちの学習障害については、しばらく特に発展がなかったのだが、次男坊のTがこの秋から小学校1年生になり、ちょっと動きがあった。

Tは「auditory processing problem」(聴覚プロセスに問題)があると指摘されていたのは、以前下記のエントリーに書いたとおり。ここには症状名を書かなかったが、軽い「hyperacusis」(日本語名は知らないが、「聴覚過敏症」といった感じ、「ハイパー・アキューシズ」と読む)もあるのでは、と、学校のスピーチセラピーの先生に指摘されている。

「目」のお次は「耳」の発達障害 - Tech Mom from Silicon Valley

これはどういうことかというと、特定の音に対して異常に過敏で、その音が聞こえると非常に不快になりイライラする。Tの場合、人がたくさんいてざわざわしているのがダメで、特に体育館やカフェテリアなどの全面硬い表面でエコーの大きい広い場所が苦手である。例えば、先日サンフランシスコのチャイナタウンで、あるレストランに入ろうとしたら、絶対にイヤだと言い張って逃げる。仕方ないので、数軒先の似たようなお店に移ったら、そこならいい、という。メニューも匂いも似たようなものなのに、なぜか?と不思議に思っていたら、最初の店はすごく大きな店で、人のざわめきがエコーしまくっている、2軒目はもっと小さくてエコーがほとんどない、という違いに気がついた。

これがあるので、たくさんの子供がいる教室では、それだけで不快感で疲れてしまうらしい。それで、音から逃げるために、壁ぎわにはりついたり、誰もいない外に隠れてしまったりする。すぐに疲れて、ごろごろ床に寝てしまったり、不安になって指しゃぶりをしたりする。最近はイライラして他の子を突き飛ばすこともある。こういうときは、自分でもコントロールできない、と本人は言っている。こうした行動は、騒音のない自宅では全く起きないので、最初保育園でこうした行動を先生に指摘されたときは本当に驚いたが、数年かかって、ようやく上記のようなことがわかって、少しは彼の行動を理解できるようになった。

Hyperacusisについては、ネットでリサーチをしたり、スピーチセラピーの先生と相談したりしたのだが、どうやら治療法は確立されていないようだ。本当にHyperacusisかどうかの検査をしても治療方法がないなら仕方ない、年齢とともにだんだんよくなっていくはず、ということで、今のところは、こうした問題を担任の先生に理解して対応していただく、ということだけで済ませている。

一方、1年生になっていよいよちゃんと本を読む練習をするようになり、どうも長男のSが経験した「視覚発達障害」と同じような問題がありそうだ、ということに気がついた。何かを読もうとするとき、目が一点にフォーカスできず、あちこちに目がうごいてしまったり、文字をさかさまに読んだり(「りす」を「すり」と読んでしまう、など)する。長男Sも同じだったが、両目がちゃんと連動する機能や、文字を追いながら目を動かす機能などに問題があると、イライラがはげしく、むやみと体をうごかしたり手や足でガタガタ物を動かしたり、落ち着きがなくて集中が続かない、という症状も起きる。Tでも、こうした一見「多動症」(ADD、ADHD)のように見える症状が激しく、先生は手を焼いている。

それで、ちょうどSが、ビジョンセラピーが終わって1年後の定期検眼をすることになっていたので、一緒に弟も連れていって検査をしてもらった。どうも問題がありそう、ということで1週間後に精密検査をしたところ、やはりかなり深刻な「トラッキング」(文字を追う機能)や「コーディネーション」の問題があることがわかった。今日、その検査結果を詳しく説明してもらい、20週間のビジョン・セラピーを行うことになった。

すでにSで経験しているので、きちんとプログラムをこなせば、きっとかなりの問題が解決するだろう、ということで、これから20週間の作業は大変だが、逆に問題の所在がこれでよかった、という安心感もある。聴覚だけの問題だったら、治す方法がなくて困っていたのだが、これはとにかくやれば目は治る。

Sでも、ビジョンセラピーを終えて、劇的に状況は良くなったが、完全ではない。「書く」機能についてはまだ問題があって、「Occupational Therapy(OT)」という訓練を学校で続けている。同じように、Tも完全には治らないかもしれないが、少なくともビジョンセラピーできっと多くの問題が解決するだろう、と思う。

ちなみに、Sのケースのその後の経過を紹介しておく。下記のエントリーにまとめたように、3年生の間にビジョンセラピーを実施して、学年の終わりの「カリフォルニア州標準テスト」では、英語の成績は4段階でいうと下から2番目「basic」の範囲だった。(上から2番目「progressive」までにはいれば合格。)読む能力と書く能力がそれぞれ3つほどの分野に分かれており、すべてが標準以下だった。セラピーが終わって1年後、今年5月の4年生の最後の標準テストでは、英語の成績は「合格」である「progressive」の範囲の真ん中あたりに上がり、さらに「読む」能力のほうだけを見ると、3つすべての分野で一番上「advanced」範囲にはいっている。「書く」能力がまだ標準以下なので、全体としては「progressive」なのだが、特に「読解」(読んだ内容を理解する)ではほぼ満点、ということで、私も結果を見て驚いてしまった。

ビジョン・セラピー経験談(上) - Tech Mom from Silicon Valley
ビジョン・セラピー経験談(下) - Tech Mom from Silicon Valley

過去のエントリーにも書いているが、アメリカでもまだビジョン・セラピーは、ADDやディスレクシアなどと比べて、あまり広く知られておらず、小児科や学校の先生も知らないことが多い。日本ではもっと知られていないのではないかと思う。もし、上記のような症状をお持ちの親御さんがおられたら、視覚を調べてみることをお勧めしたい。視覚問題なら、セラピーで治るのである。