どっちつかずの子供を育てる覚悟 --- 私が日本を捨てられない理由
梅田さんの人気エントリーの尻馬に乗って、ちょっと書いた反応を思いがけず多くの方に読んでいただいた。読み返すと、はてブのコメントにもあったが、話の半分しか書いていない、つまり「どっちつかず」のもう半分のほうを書いていないことに気がついたので、ちょっと補足しておく。
どっちつかずの子供になれ! --- 私が子供をアメリカで育てようと決意しつつある理由 - Tech Mom from Silicon Valley
子供をアメリカで育てる経験は、子供にとってはどうか知らないが、私にとっては、何から何まで、「目から鱗」の連続で、ものすごく貴重な体験だ。しかし、楽しい、面白いことばかりではない。
自分が過去何度も、仕事の場や社交の場で経験した、「東洋人に対する無関心の壁」が、やがてこの子たちの前にも立ちふさがるときが必ずやってくるのだ。前にもこのブログのどこかに書いたが、東洋人はマイノリティといっても、白人よりも平均所得が高いという「孤高のマイノリティ」であるから、「差別」とか「偏見」とかいう、あからさまなものではない。でも、「この人たちは違う人種」という、違和感が漂う場面は多い。東洋人が多く、その地位も高い北カリフォルニアではそれほど感じないが、東海岸ではその感覚が強い。また、中西部や東でも田舎に行けば、そもそも東洋人など見たこともない人が大半だ。シンシナティに出張でよく出かけていた頃、私が一人でレストランで食事をしていると物珍しげに見られたものだ。
http://d.hatena.ne.jp/michikaifu/20060323/1143096824
ビジネススクールの東洋系アメリカ人の友人たちの嘆きも何度も聞いた。東洋人がエンジニアや医者など、「手に職をつけたがる」のは意味がある。専門性の少ない、一般の営業や経営の分野では、どうしても東洋人は不利だ。(昔のユダヤ人に似ているかもしれない。)もちろん、ものすごくデキる人はどこへ行っても通用するだろうが、私のような一般人には、「人種」と「女性」のダブルマイノリティのハンディを担いながら、他のアメリカ人と同等に勝負して勝ち抜ける力はなかった。
しかし、私には幸い、祖国ニッポンがあった。今や、みんな中国中国と言うけれど、アメリカに進出している中国企業、世界でブランドを確立している中国企業はまだ少ない。携帯や家電では韓国企業は強いけれど、まぁ言ってみれば、サムスンとLGだけみたいなものである。日本では「日本はもうダメ」みたいな言い方をよくされるけれど、ビジネスの世界でアメリカから見れば、やはりその蓄積してきた実績は圧倒的に大きいし、市場の豊かさと大きさは桁が違う。ラッキーなことに、日本とのつながりを生かせば、十分商売になっているのだ。そして、そういう故郷を持っていることを、誇りに感じて何が悪い、と思う。
子供たちも、日本とのつながりを断ってしまえば、ただのマイノリティになってしまう。土曜日まで補習校に行かせて、子供も大変だとは思うが、ただでさえ不利な東洋系米国人である子供たちに、せめてバイリンガルのアドバンテージは持っていてほしいし、そういう自分のバックグラウンドに誇りを持てるようになって欲しいと思う。
それでも、子供たちが大人になって世に出る頃、日本が本当にダメな国になってしまっていては何にもならない。アメリカにいる日本人の子供たちだけでなく、日本にいる子供たちにとっても同じことだ。だから、私たち大人が、これから日本がダメにならないように、頑張らなきゃいけないと思う。
そして、異種のものが混合していることが強みであるアメリカにとっても、こういうアジア系ハイブリッド人種が増えて活躍することは、きっと良いことだと信じている。ま、ちょっと話は大げさだが。