世界テレコムニュース拾遺:PCCWのドタバタ顛末

ここしばらくのニュースを見ていたら、極めて個人的かつ局地的に面白い話があったのだが、どこにも書くところがないので、ここに書いちゃうことにした。

香港のPCCWが、夏頃から、どこが買収するのなんだのと大騒ぎをしていたのは知っていた。PCCWといえば、香港の基幹電話会社、というよりも、90年代末のテレコム・バブルでのしあがった新興財閥、といったほうがわかりやすいだろうか。

香港の港湾・テレコム財閥ハチソン・ワンポアの総帥リー・カシンという、世界で10番目の大金持ちがいるが、その息子リチャード・リーというのが、90年代に親の金にまかせてIT株を買いあさり、ついにはケーブル・アンド・ワイヤレスの中心的事業であった香港テレコムを買った。まぁ規模は違うが、ライブドアの羽振りがよかった頃に、NTTを買っちゃった、みたいなもんである。日本でも不動産投資などやっていたので、今でも東京駅八重洲口の南、ほとんど線路に面したあたりに、大きなビルが建っている(はず。最近見ていないのでやや不確か・・)。

さて、その後のテレコムバブルでご多分にもれず、株価が低迷して、6月頃から買収合戦が本格化。オーストラリアとアメリカのバイアウト・ファンドが一時はかなりの株を買収する話が進んでいたが、今は中国国営のチャイナ・ネットコムが20%の株を持っていることから、ネットコムが拒否(攘夷!攘夷でござるぞ!)。結局7月に、PCCWの23%にあたるリチャード・リーの持ち株を、オヤジの息のかかった香港の投資家が買うことになった。それで話は終わったのかと思っていたら、今月になって、シンガポール株式取引所の裁定で手続きがひっくり返り、この話もオジャン。

で、結局どうなったかというと、オヤジのリー・カシン(正確に言えば彼の運営する慈善事業ファンド)と、なんだかワケがわからないがスペインのテレフォニカが組んで、この23%を買うことになったとか。はぁ??全く、どこまでも親頼みのナントカ息子だが・・・これが先週の話。ま、この話も、最終的にどうなるかはわからないけれど。

テレフォニカは、スペインの旧国営電話会社で、自国のサービス・レベルや欧州内でのステータスなどは二流、というイメージだが、気長にスペイン語圏の携帯電話会社事業を買い集めて、南米では一大勢力となった。ここまでは、よくわかる。それから昨年、イギリスの携帯電話会社O2を買収して、非スペイン語圏に初めて進出した。うーん、いろいろ大変だろうけど、イギリスは海峡を隔てて隣国でもあり、まぁこれもわからないでもない。無敵艦隊の昔からライバルであるイギリスの、ヴォーダーフォンが世界で活躍しているのを座視できない、と思ったのかもしれない。

で・・・そんで香港?なんで??テレフォニカは、大株主のチャイナ・ネットコムとは以前からつきあいがある、との話だそうだが・・・

親父のリー・カシンのほうは、地元の携帯電話会社ハチソンのほか、香港や欧州(イギリス、スウェーデン、イタリアなどなど・・)で3G携帯を展開する「3(スリー)」をやっているが、こちらもなかなか思うように業績が伸びておらず、身売りの噂が消えては浮かんでいる。つい最近では、ヴォーダーフォンが3の買収に興味がある、との話も報じられている。そんなの、独占禁止の問題にならないんだろうか?

なんだか、スケールが大きいんだか、小さいんだかわからない、香港のテレコム業界トホホ劇場の巻。

<参考>
欧州「3」の壮大な失敗とその教訓 - Tech Mom from Silicon Valley