MNP問題とテレコム人材難の考察

携帯電話の番号ポータビリティMNP)で、ソフトバンクが炎上しているとか。あー、やっぱり・・という感じではある。

アメリカで番号ポータビリティをやったのは、もう2年ぐらい前だったかな?このときも、当初AT&Tワイヤレスだけがトラブル続出で、FCCにお呼び出しをくらったりして大騒ぎだった。続出するバックオフィスのトラブルの一つの現象だったが、結局AT&Tワイヤレスはジリ貧となり、買収されてしまった。

今回のソフトバンク問題の記事をざっと日経で読んだところ、新しい管理システムを10月半ばに稼動したと書いてあった。えーーーー!!!!そんなの、無理に決まってるじゃん!起こるべくして起きた事件としか言いようがない。

顧客を新規に登録したり、サービスの中身を変更したりするための、携帯電話会社(キャリア)内部の作業を業界用語で「プロビジョニング」と言う。利用料金のデータを集めて請求書を出すシステム(ビリング)やカスタマーサービス・システムと一体になっていることが多く、OSSと総称されている。地味ながら、実は大変高度で堅牢でなければならず、まさにキャリアのノウハウの塊である。日本では、あるいは米国でも固定電話側は、内部でやることが多いが、欧米の携帯電話会社では、このシステムをキャリアに売る「OSSベンダー」が数多くあり、一大産業として確立している。

MNPでは、自社だけでなく他社との間でのやり取りも含まれる複雑なプロビジョニング作業になるので、キャリア各社は当然、米国の失敗例を研究したり、かなり前からOSSの準備をさをさ怠りなくやっていたに違いない。

にもかからわず、新しいシステムが10月半ばに立ち上がるというのは、その前に余程のごたごたがあって、予定より大幅に遅れたに違いない。無理やり間に合わせたけど、きっと問題が多かったに違いない。立ち上げて1週間やそこらで、一気にトランザクションが増えるMNPをさばけるほどの安定状態に持っていけるとは思えない。これを担当する責任者を、マイクロソフトから引き抜いてきたと同じ記事に書いてあったが、だってマイクロソフトなんて、OSSの世界ではナーンの実績もない。アムドックス(世界最大のOSSベンダー)から引き抜くならまだ話はわかるけれど・・・

よほど、人がいなかったのだろうと思う。考えてみれば、経営トップだとか、営業の幹部とか、そういった華やかな部署では、NTT系とか、外資キャリアにいた人がソフトバンクに移ることもありそうな気がするが、プロビジョニングをやってた人が、ドコモからソフトバンクに引き抜かれるということは、起こりにくそうだ。

アメリカでは、ほとんど定期的に、キャリアの買収がおこり、そのたびに、上から下まで、キャリアのノウハウを持った人が大量に辞めさせられるので、あらゆるノウハウ保持者に流動性があって、ベンチャー外資が新規に人を求めることも比較的容易だし、アメリカからイギリスに行くとか、イスラエルから来るとか、そういうのもよくあるが、日本ではそうはいかない。

NTT東と西のIP電話停止問題と合わせ、「キャリアのオペレーション軽視」を叩く風潮があるけれど、少なくともソフトバンクに関していえば、そういうワケでややかわいそうな気もしてしまう。もちろん、それなら、新規発売の端末の数そろえたり、新料金プランをぶち上げるためのリソースを、そちらに割くべきだったろうし、とにかく人材を確保しないといけないというのは、もうソフトバンクではずっと前からわかっていることなのだから、そりゃ自分も悪い。まーでもね・・・ドコモとKDDIは、完全に「ソレ見たことか」モードになっているし、キャリアの世界に新規参入するのは、本当に大変なことだ、と、改めて思ってしまった。

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