Web2.0と対立する2つの世界(その3)幸福なシリコンバレー一族の里

さて、昨日雇用への波及効果が少ないネット企業の話を書いたが、シリコンバレーでは少々事情が違う。例えば、ソフトウェア会社のオラクルは、アメリカ経済全体から見たら、自動車会社や電話会社ほどの経済への波及力はない。しかし、オラクルの城下町であるわが町では、オラクルがつぶれたら大騒ぎになる。住民の何割かが職を失い、街のレストランや、オラクルに納入している商店やら弁護士事務所やらが軒並みつぶれる。地元の学校や非営利団体も、軒並み大口寄付がなくなって大変なことになる。だから、わが町は何かコトがあれば本気でオラクルを支持するだろう。これは、グーグルのあるマウンテン・ビューでも、アップルのあるクパティーノでも、ネット以外の普通の企業城下町と同じことだ。

こういう町が、2本の平行して走る高速道路沿いに、ピーズの首飾りのようにぎっしりと連なっているのがシリコンバレーである。だから、サンフランシスコからサンノゼまでの全域と、さらにその周辺まで含めたこの地域では、プレスも住民も政治家も含めて、本気でネット企業の味方をする。この地域内で、群雄割拠の大名程度の独立性が保てるぐらいの経済規模もあり、ベンチャーキャピタルや過去に成功した起業家などの資本蓄積もあり、卒業したベンチャーを買ってくれる大企業も十分な数があるので、別にシアトルやロサンゼルスやニューヨークにへーこらする必要はない。

そして、続々とわいてくるWeb2.0企業群は、将来のシスコやインテルになるかもしれない、一族の大切な子供たちだから、大事に育てられる。外で多少乱暴をして他の子を泣かせても、どなりこんできたその子の親を「まぁまぁ」となだめて追い返してくれるパパもママもいるのだ。マイクロソフトやディズニーが攻めてくれば、一族全部が蜂起して団結して戦う。幸せな環境だと思う。ただし、一族の中での選抜も厳しいという面もあるのだが。

これに対して、東京でいきなり旧勢力の荒野に投げ出される日本のネット企業は、卵からかえったらもう守ってくれる親はいなくて、すぐに大きな魚に食べられてしまっても仕方ない、稚魚のようなものだ。乱暴を働けば、大きい子たちが寄ってたかってボコボコにして終わりになる。日本で起業したベンチャー会社は、自分で自分の身を守るすべを早くから身につけなければいけないことになる。

ますますWeb2.0から脱線してきた。この表題、つけ間違った・・