Converged Devices (その3) - ビデオiPodはPDAのライバル?

このところ、ネガティブな話ばかり書いてちょっと反省。今日は、新しく購入したビデオiPodまわりの感想を書こうと思う。

私は根がガジェット苦手人間なので、普段は発売直後のオモチャなど絶対買わないのだが、購入直後からずっと調子の悪かったiPod miniくんがついにウンともスンとも言わなくなってしまい、子供に「早く新しいのを買え」とガンガン催促されて、どうせ買うならじゃぁビデオ、ということで買ってみた。

結論から言うと、これまでのminiやnanoが携帯電話なら、VideoはスマートフォンまたはPDAだな、と思ったのだが、このマルデ私的言い方じゃぁ普通の人はわからないよね・・

フォームファクターとビデオ画面

Videoは、miniより面積が広くてそのかわり薄い。表面がガラスになっていて、重量は重い。あの、手にもったときの、適度な重量と丸みの「しっくり感」が失われてしまったのは寂しい。十分なモニター面積を確保するために仕方ないだろうが、モバイル機器の死活を握る微妙な「フォームファクター」の世界では、ややマイナス点部分だと思う。

で、問題のモニターだが、とってもキレイ。試しにいくつか無料のビデオ・ポッドキャストと、有料のTVドラマ「Desperate Housewives」をダウンロードして使ってみたが、思った以上に使える。スタンドがないので、ずっと手に持って見なければならない、ということをWSJのMossberg氏が指摘していたが、使う場面がゆっくりスタンドで立てて見られる場面でないので、あまり困らない。まだ見られるビデオのソフトが少ないのだが、オモチャとしては十分使えるレベルと言って良い。映画は疲れるだろうが、ビデオ・ポッドキャストはこの画面の大きさに最適化して制作しているから、全く違和感はない。テレビ番組はその中間といったところ。因みに、我が家の環境(ケーブルモデム+WiFi)で1時間番組をダウンロードするのに25分かかった。同期はあっというま。

意外な掘り出しモノ機能たち

ここから先は、以前書いたスマートフォンに関するエントリーなども参考にして読んでいただくとわかりやすいと思う。

Converged Devices その1:iPodは携帯電話と融合するか - Tech Mom from Silicon Valley
Converged Devices(その2)-「パソコン一家のきかん坊」とiPod電話 - Tech Mom from Silicon Valley

さて、私はこうした、肝心のビデオの品質やフォームファクター以上に、気になった部分がある。それは、「Extra」や「photo」といった、「おまけ」の部分である。従来のminiとは格段の違いがあるのだ。

写真が入れられるiPodは前からあったが、あまり話題になったという記憶はない。これも、Photo機能は全然話題になっていないし、確かにPhoto機能だけなら私もそのために新しいiPodを買うほどのことはないが、Videoのオマケについてくるなら、これまた結構使える。最近はデジカメで撮った写真をプリントアウトするのが面倒で(時間がかかるし、品質の調整とか紙を買ってくるとか、要するに面倒・・)、人に写真を見せるときには、パソコンがないとダメという怠慢状態に陥った私であるが、iPodに同期させてしまえばよくなった。子供の写真や、好きな俳優の写真などを持ち歩いている。

それより気になるのが、Extraにある「PIM(Personal Information Management)」、つまりカレンダーやアドレス帳である。パソコンのOutlookに入れておけば、音楽やビデオのファイルと同じように、自動的にというか、強制的にデータ同期する。私はOutlookを使っていないが、MSN Messengerを使っているワークグループのアドレスがはいってきた。これは知らなかった。スゴイ。

時計機能には、複数の時計が入れられる。これもパソコンと強制同期するので、自分で設定しなくても、「アメリカ西海岸時間」がはいり、夏時間から冬時間への移行も自動的に行われる。これに、さらに「東京」とか「ロンドン」とか、自分で設定して入れられる。これは便利!

ゲームもいくつかはいっている。「ソリテア」「ブロック崩し」などの簡単なものだが、キレイなカラー画面なので、これもかなりパソコン感覚で見られる。ストップウォッチなんかもついている。早速、ビデオファイルのダウンロードにかかる時間を計るのに使った。子供の計算練習にかかった時間を計るときなどにも使えるし。

つまり、Video iPodは、音楽・ビデオ再生機器であると同時に、かなり「Converged Device」になっているのだ。「端末からの入力ができない」という決定的な違いを除くと、PDAで使うような機能が、これでかなり済んでしまうのだ。いろいろな付加機能は、消費者というよりややビジネスマンに親和性のあるものが多い。フォームファクターを犠牲にして、値段も高い分、ビジネス需要も視野に入れたのかな、という印象を持った。

ライフスタイルとの適合

それともう一つ。iPodは、全体としてアメリカ人の車で移動するライフスタイルにしっくり合っているのだが、Video iPodはそれよりもやや、飛行機で移動するスタイルに合っているように思う。

ポッドキャスティングを愛用するようになって、iPodのカーアダプターを最近ようやく購入。いざ買ったら、もうiPodを手放せなくなってしまった。サンノゼ方面のミーティングに片道45分運転する間、TWIT(This Week In Tech)を聞いていれば、しこしこウェブをサーチして情報を集めなくても済んでしまう。ぼーっとしていただけの運転時間が極めて生産的になる。一方、例えば日本のiモードのような携帯コンテンツサービスは、運転中は使えない。かなりの長時間、音声流しっぱなしという娯楽の形態は、車移動には最適なのである。これに加えて、ジムで運動する間使うというのが、(学生以外の)アメリカ人のiPod標準的な使い方だと思う。私だけが思っているのでなく、ポッドキャスティングを流している人々もそのように言及している。

これに対して、ビデオは運転中は見られない。しかし、サンフランシスコからシアトルまでのフライト2時間弱の間、「Desperate Housewives」をちょうど一本見ることができる。パソコンをごそごそ出さなくても、まとまったビデオを見られるというのは、ちょこちょこした飛行機移動の多い人(=ビジネスマン)には、すごく便利だと思う。

こうしたところも、携帯電話よりも「PDAスマートフォン的」だと思うのだ。

全体として、値段の高さやビデオ・ソフトの不足のために、当面は大ヒットはしないだろうし、どちらかと言うと実験的な位置づけなのではないかと思うのだが、ここしばらく、仕事の必要上いろいろ見てきた、テレビ対応の携帯電話やスマートフォンと比べて、私にとっては「Converged Device」として一番腑に落ちるもののような気がする。ソフトという水をいっぱいやれば、大きく育つ苗なのではないかという気がするのだ。

それにしても、miniくんで壊れたのは電源。携帯電話もノートパソコンも、とにかくなんでも壊れるときは電池まわり、というのはなんとかならないものか。携帯カメラが7メガピクセルになるより、電池の持ちがよくて壊れないほうが、全然価値ある、と思うのは、ガジェット苦手な私だけだろうか・・・