結婚の規制緩和と欧米それぞれの結婚リスクヘッジ

昨日の日経新聞の片隅に、「大和総研少子化対策には結婚の規制緩和が有効」なる記事が載っていたので、思わず賛成論を書いてしまう。なるほど、うまい言い方をしたものだ。ずっと前から私の心の中にくすぶっていたモノがうまくこれで表現される。なるほど、そう考えればいい。

確かに、北欧を中心とした欧州では、結婚の比重が低く、婚外子もきわめて多い。結婚という形式を経ずに、共同生活も子作りもできる。一方、アメリカはまだまだ保守的で結婚の比重は大きく、婚外子も欧州ほど多くないが、結婚のやり直しがしやすい。

アメリカ社会は、日本と比べて夫婦の関係がより緊密だと感じる。この国は、幌馬車に夫婦と子供から成る一家が乗り、はるばる西を目指した頃から、核家族が生活の基本のようだ。終身雇用ではないから、職場の人間関係は日本よりずっとドライなので、休みの日まで会社の同僚や上司とつるむことはあまりない。仕事が終われば車で家に帰るので、途中でどこぞに寄ったり、人に出会ったりする確率も低く、物理的に不倫もしにくい。よりどころとなる共同体は家族であり、社会的な行事は夫婦単位で出席するのが基本。いわば、抜き差しならない関係を構築しなければならないわけだ。

だからこそ、うまくいかなくなったら、離婚することもやりやすくなっている。州によって離婚の条件は異なるが、特に理由がなくても、一定期間別居していることが証明できれば離婚できるところが多い。かく言う私も、現在は二児の母だが、もし日本に住み続けていたら、今でも最初の不毛な結婚の解消ができず、別居だが離婚できず、従って再婚も子どもを持つこともあきらめざるを得なかっただろう。

失敗したら大変だから、日本人は結婚というリスクを取ろうとしない、というのはとてもよく理解できる。保育所補助金だけが少子化対策ではない。結婚して子供を持つということへのハードルを低くすることは、確かに効果があるだろう。

ただ、新聞記事で読む限り、「欧州型」と「米国型」のどちらが望ましいのか、という話は言及していなかった。「欧米」と言って一つにくくってはいけない。この二つは大幅に違うのである。私は、日本が「欧州型」へひとっ飛びするのは、さすがに難しいのではないかと思う。結婚という枠組みは残したまま、そのやり直しをやりやすくする「米国型」のほうが、自然なステップのように思う。

アメリカを「離婚天国」と揶揄するなかれ。必要だから離婚しやすい仕組みになっているのだから。