ガラスマの「囚人のジレンマ」はもうやめたら?

日本とアメリカの両方で、スマートフォン向けアプリを提供している開発者から聞いた話。とある日本だけで使われているAndroid端末(=ガラスマ)でその会社のアプリを使っているユーザーから、動かないとのクレームがあり調べてみたところ、Android OSのメーカー独自部分に重大な欠陥があることがわかったそうな。

「だいたい、日本の携帯端末って、ものすごい機種数があるから、カタログがものすごく立派で分厚い。あんだけたくさんの端末をそれぞれのメーカーが出して、ちゃんとあとのサポートができるはずがない。不具合直す気がぜんぜんないんだから。端末もカタログも、どんどんゴミ作ってるのと同じ。」

ごもっともである。確かにAndroidという同じOSを使っているが、それでも機種ごとに微妙に異なる。iOS vs. Androidという宿命の対決の中で、Androidの「細分化」というのは特に開発者にとっては大問題。先日Tweetしたように、もともとiOSのほうが何かと開発者フレンドリーなのに加えて、Android側は端末機種の細分化問題も抱える。

さて、米国の携帯キャリアはネットワークの更新など戦略的な時期に合わせ、数年に一度全力を出して端末攻勢をかけるが、それ以外の時は割に力を抜いている。少し前にAT&TiPhoneを出したのは3Gの全国展開がほぼ終わり、ようやく全体を2Gから3Gにひっくり返せる用意が整った時点だった。ベライゾンiPhone対抗のためのAndroid導入時に、Blackberryを捨ててAndroidを強力にプッシュして初速をつけ、そこからBBの凋落とAndroidの躍進が始まった。各キャリアは、数がまとまるように機種をあまりやたらに増やさにように気をつけている。

それに比べて、日本のキャリアはいつも力いっぱい。毎四半期ごとに、大量の新モデルを並べる。ただでさえ、販売量の少ない日本のメーカーが、四半期ごとにさらに細分化されて、一モデルの生産量は極小。

メーカーが儲からないだけではない。最近、日本のラインアップを詳しく見ているわけではないので(つーか追ってもあまり意味ないのでやってない)、スマホに関してはガラケーほどどんどんモデル切り替えしているわけではないのかもしれないが、それにしても上記のような状態。ただでさえ細分化問題を抱えるAndroid市場を、極小日本メーカーとキャリアがそれぞれの思惑の順列組み合わせでズタズタにしてしまっている。アプリ開発者はつきあっていられない。ますます、iPhoneが有利になる。Androidガラスマは自滅の道に突き進む。結局、日本のメーカーさんは必死になって、みんなでiPhoneのために我が身を捧げているという構図。だからiPhoneを持たない某社が苦戦する。自分の首を絞めてどうする。

四半期ごとに大量の機種を出すという、10年前にうまくいっていた習慣ながら、メーカーもキャリアもホントはそろそろやめたいのに、みんなで一緒にやめないと、結局抜け駆けしたヤツだけが勝ってしまうという、「囚人のジレンマ」になっているのではないかと思う。

もういい加減、やめたら?無駄に捨てられる資源ももったいない。いつものようにお役所が旗ふらないとなかなかやまらないのかもしれない。それも情けない。「地球環境に配慮して」とかなんとか、麗しい口実でもくっつけて、みんなでいっせーのせっでやめてくれないか、と思う。

まぁ、もうスマホで日本メーカーが今後なんとかなる見込みはどっちにしてもないのだけれど、開発者のためでもユーザーのためでもある。それに、そろそろどこかのメーカーを軸に、買収合併でメーカー数をが〜っと減らしておかないと、やがて来る次なる世界的な「たまに全力出す時期」の波にまた乗り遅れちゃうよ・・総員共倒れ討ち死に状態から抜け出せないよ・・・

<追記>
多くのRTをいただきありがとうございました。いただいた反響より、下記を追記しておきます。
(1)品質問題は特定のメーカーの問題、品質維持に努力しているメーカーさんも多い、とのご指摘ありました。
(2)現在は四半期ではなく半期ごと程度に緩和されています。
(3)メーカーによっては、すべての発売タイミングに新製品を出さず、さらにペースを落としているそうです。
(4)ただ、Androidの細分化を促進してしまっているという点は引き続き変わっておらず、また私がここで問題にしているのは「新しく出す製品の品質」ではなく「ソフトウェアのメンテナンス、開発者のサポート」という「出した後」の対応です。おそらくそういう観点から、開発者からは「共感」のツイートを多くいただきました。