BARTに乗って − 在外選挙とスマートフォン

さて、在外選挙。領事館での投票は昨日から土曜日までなので、早速サンフランシスコの領事館に行き、投票をしてきた。過去に郵便投票と領事館投票をどちらも一回ずつやったことがあるが、郵便は事前に在外選挙登録票を選挙区に送って投票用紙を送り返してもらい、それに書き込んで再度送る、という時間と手間がかかり、それなりに面倒なので、往復2時間かかるけれど、BART(一部地下鉄の近郊電車)に乗って町まで行って投票してきた。他の人たちと一緒に、仕切りのついた机で書き込んで投票するのも、懐かしい気分にひたれてこれまたよいものだ。(私って変かな?)前回の参議院選挙のときから、選挙区も投票できるようになったらしいが、前回は投票しそびれ、比例区小選挙区と両方投票できたのは今回が初めて。

領事館は、日本人向けコミュニティ誌に載せたり、eメールを送ったりして選挙の広報をしているのだが、それによると「自分がどの選挙区に該当するかは、自分で確認してきてください」などと書いてある。領事館には全国の選挙区の区分けとそれぞれの候補者のリストが備え付けてあって、その場でも確認できるが、候補者がどんな人なのか、それぞれの党が何を言っているか、などは、日本語放送・新聞・ネットなどで自分で調べることが原則。在外選挙ができるようになる前には、「全員にきちんと周知できない」ことを理由に反対する声が議論の中であったのだが、「できるだけでも可能にすべき」との原則で、こういった「ゆるい」フンイキで選挙できるのは、ある意味「日本らしくなくて」、私のような者にはありがたい。

さて、まったく別の話だが、SF市内で領事館のようなMarket Streetから歩ける範囲にある場所に行くときには、最近BARTをけっこう愛用している。全体的には余計な時間がかかるので、仕方なく車で行くときもあるが、乗っている間寝られるし、コストは少なくてすむし、駐車場の心配をしなくてよいのがありがたい。(BARTの最南端始発駅Millbraeまでは車で行き、駅の駐車場に停める。)

そのときにいつも楽しみなのは、乗っている人たちがどんなケータイを使っているのか観察すること。この近辺で、これだけたくさんのフツーの人が携帯を使ったり持ち歩いたりしているところを、まとまって見られる場所はなかなかない。普段の私の立ち回り先は、ギークばかりのiPhoneだらけ、またはモバイル業界人ばかりのBlackberryだらけのどちらかのことが多いのだが、BARTなら、ブルーカラーのおっちゃんも、ヒップホップのにーちゃんも、メキシカンのおねーちゃんも、貧乏学生も、金融業界のサラリーマンも、いろいろ乗っている。というより、どっちかというと、ここに挙げた中で「金融業界のサラリーマン」以外のカテゴリーが多い。

ここしばらく、そういったフツーの人たちも、SFではほとんどなんらかの「スマートフォン」を使うようになったと見える。BARTでは、地下部分では駅に止まっているとき以外は電波が届かないので、普通の携帯での「会話」というのはできず、BARTの中でケータイをいじる人は、スマートフォンの通信が必要ない部分(メールを読んだりゲームをしたり・・・)を使っている、という要素もあるので、多少割引して考えるべきなのだが。なにしろ、電車の中で多くの人がケータイを一心に操作しているという図は、もはや日本だけのことではない。
そして、その使っている端末は、実に多岐にわたる、ということが面白い。サムスンだったり、パームだったり、LGの安いメール端末だったり、本当に種々雑多。今日も前回も、不思議なことに、iPhoneを使っている人を一度も見かけなかった。Blackberryは時々見かける。

サンフランシスコという、テクノロジー企業の影響が強く、かつブルーカラーの多い大都会ではこんな感じ、シリコンバレーではみーんなiPhoneだけれど、もっと田舎に行くとさらに風景は違うはずだ。たぶん、フツーのケータイがまだまだ多いはずだ。一方日本のメディアは完全に無視しているBlackberryだが、これを作っているRIM社の市場価値はバカ高く、アメリカの株式市場での評価は高い。うがった見方をすれば、金融業界の人はBlackberry大好きだから、株価にはバイアスかかってるのかもしれない。この現象を、私は「理系のiPhone、文系のBlackberry」と称している。

iPhoneは確かに目立つしその影響力は確かに大きいけれど、「電話業界」が相手にしている「一般ピープル」の世界は、またちょっと違って見える。どれが本当でどれが嘘ということはなく、これらはすべて部分的に切り取った真実。ときどき、こうしてあちこちで現実をチェックしないといけないな、と改めて思う。

なお、統計で見るとBlackberryが相変わらずダントツで、これにiPhoneが続いて2強(Gartnerによる)、といった話を「ビジネスアスキー」に書いたので、もうすぐ出る9月号(かな?)を参照してください。