変人列伝(1) Sir Richard Bransonのおもてなし

イギリスのヴァージン・グループ総帥、リチャード・ブランソンといえば、派手で「flamboyant」(目立ちたがり)で「キンピカ」のメディア・エグゼキュティブ、というイメージを持っていた。その彼が今日はCTIA初日のキーノートに登場した。


私の先入観を覆し、ブランソン氏はdown-to-earthでフレンドリーで魅力的な人だった。彼のスピーチには、「consumer」や「customer」というコトバが何回登場したか、数えられないぐらい、「consumer oriented」を強調。特に面白かった話は、たとえばこんな話・・・

  • ヴァージン・グループの「ブランド・ベンチャーキャピタリズム」。「ヴァージン」というブランドを核として、全く関連のない事業を次々と展開するという考え方。なかなか真似できるものではない。彼だからできるんだろうね。
  • 最初に始めた音楽プロデュース会社の名前を「ヴァージン・レコード」にすると決めて、社名を登録しようとしたら、役所の人に「これはpoliteではない」と言われて拒否され、受け取ってもらえるまで3ヶ月かかった。
  • ある日、カリブ海ヴァージン諸島にフィアンセと休暇に行き、そこからプエルトリコに飛ぼうとしたら、予定していたフライトがキャンセルになってしまった。そこで、チャーター機を雇ったのだが、他にも足止めを食った人がたくさんいた。それで、チャーターの費用をその人数で割り算し、「プエルトリコまで79ドル、ヴァージン・エアライン」と小さい黒板に書いて空港を歩いてまわり、お客を集めた。着いたときにお客さんが皆喜び、「ヴァージンエアラインのサービスはよかった」と言ってくれた上に利益まで出たので、もしかしたら航空会社をやったらいいんじゃないか、と思いついた。
  • 宇宙旅行の話では、グーグル創業者の二人と一緒に作った会社、「ヴァーグル(Virgle)」(笑)で、今火星に行ってそこに町を作ることを計画中。問題は、行ったきり戻って来れないことだが、それでも行こうと言ってくれる人が何人かいた。ちょうど、大航海時代にイギリスからアメリカに渡って住み着くような、フロンティア開拓の夢。そういえば、そうだよね、当時アメリカに渡るという決意は、今で言えば火星に飛んでいくぐらいのものだったんだろうね。
  • MVNO事業のヴァージン・モバイルも、お客さんの声を聞いて、「こういうモノがほしい」という願いを実現したもの。現在、世界各地で1200万人のお客さんがいる。

そして最後には、聴衆に向かって「この中で、火星に行きたい人はいますか?地球を離れてしまいたい人がいたら、歓迎しますよ。2−3人いれば十分なんだけど。」と声をかけたところ、50人ぐらいの人がぞろぞろと舞台に上がっていって、なんだかワケがわからないメチャクチャな盛り上がりで講演は終了。

なるほど、ブランソンというのは、中島さん流に言う「おもてなし」の人なんだな、と思った。アントレプレナーにもいろいろあって、技術力で卓越していることで会社を興す人だけじゃなくて、こういったいわゆる「人たらし」を武器にして成功する人もいるのだけれど、それにしてもやはり根幹は「おもてなし」ということに尽きるようだ。