「坂の上の雲」に見る通信の歴史

当地でもTV Japanで「坂の上の雲」をやっている。先日の二百三高地の場面で、「あーやって、ケーブル伸ばして電話したんだ!」と、ケーブルを巻きつけたラックを運びあげる兵士の姿に妙に感動して、自分で職業病だとつくづく思ったのだが、同じように思った業界のご同輩もおられて、FBやTWでコメントいただいたので、ちょっと調べてみた。

ドラマの舞台となっている日露戦争開戦は1904年。その前後というのは、通信にとっても大きなイノベーションが爆発的におきた時代だったのだ、と改めて思う。(ソースはWikipedia、裏取りはしてないのでご注意。)

1837 モールスによる電信の発明(有線)
1866 大西洋横断ケーブルができる
1876 ベルによる電話の発明(有線)
1896 マルコーニによる無線電信の発明
1897 日本で無線電信の実験に成功
1904 フェセンデンによる無線電話の発明
1908 日本で海軍による無線電話実験成功

そういえば、陸軍ではケーブルを碍子に巻きつけて延ばしている間、海軍ではモールス信号の電信テープを解読してモックンに報告している。マルコーニが発明してから10年も経っていない。そして海軍が無線で電話できるようになるのはこのほんの数年後!(ちなみに、予算のかかった最近の大作ドラマでは、こういったものの描写はきちんと時代考証して、マニアックにリアルにこだわっているケースが多いので、きっと本当にあんなふうだったんだろう、という前提で見ていたが、NHKさん、そういう理解でいいでしょうか?)

明治維新の生き残り(児玉とか乃木とか)がまだまだ活躍しているというのに、彼らの人生前半の「江戸時代」とはなんという違い。技術そのものの進歩だけでなく、それが日本に伝わって実用化されるスピードもすごい。

そして、この帝国主義時代の軍事ニーズが、こうした急激なイノベーションの背景にもなっていたこともよくわかる。発明した人たちが軍事目的を意識していたかどうかは別にして、「軍事」にカネが集中していて、それが技術革新のインセンティブになっていたということだろう。現在の3G携帯のベースになっている符号拡散技術も、インターネットも、もとはといえば軍事ニーズから始まっている。

それにしても、戦争も帝国主義もなくても、通信やその上位レイヤーのイノベーションが起こる現代は、本当に幸せな時代だなぁ。