ジャック・ロンドン「Call of the Wild」

野性の呼び声 (光文社古典新訳文庫)

野性の呼び声 (光文社古典新訳文庫)

備忘録としての感想メモ。(まともな書評ではないのでご注意くださいませ。)アメリカ文学はあまり馴染みがなく、読書しようと思ってもどこから手をつければいいのかわからないので、とりあえず、息子が中学の英語授業の課題で読んでいた、地元サンフランシスコ出身作家の代表作を読んでみた。(いつものとおり、メディアは英語版オーディオ・ブック)

ジャック・ロンドンという名前は、我が地元では有名な寿司屋+ジャズクラブ「Yoshi's」が、オークランドの「ジャック・ロンドン・スクエア」にある、ということで「地元の有名人なんだろうな」ぐらいしか知らなかったのが正直なところ。ちょっと前に、息子が「英語クラスのエクストラ・クレジットがもらえるから、ソノマのジャック・ロンドン公園に連れて行って」と言いだして、初めて「作家」だと知った。ジャック・ロンドン公園は彼の晩年の住居を公園として公開しているところで、ワイン名産地のソノマにあり、「よし、ついでにワインの買い出しもできるし、行くか!」ということで、家族みんなで出かけた。鬱蒼とした森の中の石造りの家が記念館になっていて、さらに奥には、もっと広大な住居の焼け跡。大金はたいて夢の邸宅を作ったが、入居前に火事で焼けてしまい、ほどなく彼自身も40歳そこそこで謎の死を遂げたそうだ。19世紀後半から20世紀初頭にかけての時代に、世界中を冒険旅行してまわり、職業も転々として、新聞記者として日本にも行ったことがあるという。(公園内には複数のハイキング・コースもあり、自然が美しく、当地お住まいの方が週末遊びに行くのにはオススメ!)

・・というバックグラウンドのほうを先に知っていてこの本を読んだ。19世紀終わり、アラスカで金が発見され、「クロンダイク・ゴールドラッシュ」*1というのがあった、というのも実は知らなかった。カリフォルニアのゴールドラッシュよりも、50年ほど後の時代のこと。ロンドン自身も、このゴールドラッシュに一儲けを狙って出かけている。その時代、カリフォルニアから盗み出され、アラスカでそりを引くために売り飛ばされたバックという犬の物語。

延々と、壮絶なアラスカの冬の寒さと餓えと外敵との戦いが続く。暖かいサンタクララで裕福な家に飼われていたバックが、次第に変わっていく。中盤、ちょっと集中できず、お話として「面白かったか」というとなんとも言えない。たぶん、本筋としては「愛と成長」が主題なのかもと思うのだが、私にはそれよりも、それほど遠い昔でもない時代、ワイルド・ウェスト最後の時代の、厳粛で鮮烈で静かな風景と、人の営みのほうが印象に残った。

こんな厳しい自然の中で、乏しい食糧で飢えかけた犬を殴りつけて無理に働かせてまで、自らも命の危険を冒しながらも、なぜ人はそこに出かけたのか、といえば、要するに「欲」。金を求めていったわけだ。サンフランシスコもゴールドラッシュでできた。そして、ロンドンが小説を書き始めたのは、「金持ちになりたかった」から、という話もある。今、シリコンバレーは別の種類の「ゴールドラッシャー」たちの約束の地になっている。それはまた別の意味で、「call of the wild」のような気もする。

などとまぁいろいろと考えながら読んだけれど、結末部分ではちょっと背筋がゾクッときた。読んでよかった。

それにしても、ここに貼り付けるために日本語版をサーチしたら、日本語題は「野生の呼び声」なんだ!そういえばなんか聞いたことが・・・日本でも、少年向けのクラシック文学として知られているようだが、私は読んだことなかったな・・・いや、世の中、知らないことは多いっす・・

なお、英語勉強中の方にかねてから「オーディオブック+英語版の本」の組み合わせをオススメしているが、これなどは長さもそれほど長くなく、古典的な言い回しなどもないので、良いのではないかと思う。

Penguin Active Reading: Level 2 The Call of the Wild (CD-ROM Pack) (Penguin Active Readers, Level 2)

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*1:余談ながら、バニラアイスをチョコで包んだ四角い「Klondike」というアイスがあるが、これはこの「クロンダイク」なのだ、ママも読んだでしょ、と、スーパーで買い物をしながら、息子に延々と講義をされた。