日本のテレビ業界大再編の初夢

あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。

当地では今日から子供たちの学校が始まり、平常営業となる。それで、2週間ぶりに、朝のいつものローカルニュースをテレビで見たところ、面白コマーシャルを発見。

有名な古いCMのパロディらしいが、昔風の「映画館へ行こう」という歌に乗って、ソーダやポップコーンのキャラクター・アニメが歩いてくる。が、実は歌は「映画館」でなく「DMV(Department of Motor Vehicle、自動車の免許や車両登録を扱う役所)」で、背景も、DMVの待合室の椅子で延々待っている人たちの映像。みんな、手にはスマホタブレットを持って見ている。「ん?何のCM?」と思ったら、最後にAT&Tのロゴが出て、息子と二人で大笑いした。(YouTubeに出ていないか探したが、現時点ではまだ見つからない。)

このあたりの背景事情は、11月に日経ビジネスオンラインに書いた、「テレビ業界の大乱闘」の話を参照していただきたい。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20101126/217294/

このCMはどういう意味かというと、AT&TのIPTVサービス、U-verseのユーザーになると、居間のテレビだけでなく、iPhoneタブレットでも、いつでもどこでも有料テレビが見られる、というサービス。テレビも携帯も持っているAT&Tならではの強みを生かしている。現在米国では、ケーブルテレビと電話会社によるIPTVサービスの間の競争により、両者しのぎを削っている分野の一つでもある。我が家は電話局から遠く、U-verseは当分やってこないので、仕方なくブロードバンドはComcastのケーブルモデムで、テレビもComcastであるが、こちらも最近「Xfinity TV」というサービスを開始。ケーブルは携帯部分を自分で持っておらず、やや出遅れていてまだ番組そのものは見られないが、iPhoneiPadで番組のサーチや録画予約ができるようになった。テレビのリモートよりずっと簡単で、我が家でもよく使っている。

池田信夫さんが「テレビの終わりの始まり」と書いておられるが、こういう傾向は皆様ご存知のとおり、今に始まったことでもなく、また日本だけでもない。アメリカでも、地上波テレビの視聴者平均年令は50歳を越えているらしく、相変わらずのフットボールなどのスポーツを除くと、いかにも中高年主婦向けの「Dancing with Stars」などといった番組が大人気である。

それでも、米国の地上波テレビ局は、広告以外の収入源への多角化がだいぶ進んでいるので、マシなようだ。ドラマをDVDにパッケージ化して売るというのは昔からあり、最近はDVDだけでなく、HuluやNetflixといったオンライン配信も進んでいる。もう一つの大きな収益源が、上記の記事にも書いた、「再送信権利料」である。ケーブル経由の配信料なのだが、ケーブルが儲かっているものだから、地上波は必死にこの分け前を増やそうとして、バトルが大変なことになっている。

日本で広告料減少により、テレビ局の行き場がないのは、広告代理店や芸能事務所などとの関係もあるのだろう程度にしか、外野の私にはわからない。わからないのでユーザーとして勝手に言うが、米国と同じように、全く新しい大きな収益源が見込めない世界では、力関係によって取り合うしかないのだから、テレビ局が本気で立ち直ろうと思ったら、「だから広告が」とか言い訳してないで、まずは統合して民放2局ぐらいにしてしまって、他のステークホルダーに対する力を強め、テレビ広告枠の供給を減らせばいいのに、と思ってしまう。(まぁ、日本のテレビ局は不動産業で儲かっているので、別に困ってなくて、めんどくさいことはしたくないので大きなお世話、ですね、きっと。)

それでも敢えて初夢話を続けると、余った電波は、携帯電話用に二次市場で売れるようにしよう。いい電波なら高く売れる。そして、長期的に投資する余力を確保してから、コンテンツをオンラインや携帯で売れる仕組みを徐々に作る。これはにわかには儲からないし、広告一発うん百億円の世界のテレビ屋さんに、一本番組売って300円というコツコツ商売は性に合わないし、課金の仕組みから作るのは大変だから、ケーブル会社とか電話会社とか経由でやれるようにして頑張ってもらい、そのかわりコンテンツ料をがっぽりとる。電波を増やせば携帯の帯域も増えて、映像コンテンツが見やすくなるし、課金モデルを作れば番組個別課金もしやすくなるので、携帯経由での有料配信も増やせる。ワンセグをどうするかは知らない。誰か考えてください。なにしろ、統合して、配信部分の工夫で有料化して、広告以外の売上を増やして、コンテンツ制作のお金がきちんとまわるようにするのが、最終的にはユーザーのためではないかと思う。ひな壇芸人の仕事が減ってしまうから、彼らは困るかもしれないが・・・

やたら競争させればいいわけではないと思う。今、ネット・通信業界は、統合と長期投資の仕込み時期だと思う。適切な時期に適切な形で「価格・料金」を軸に業界再編ができないと、全体が沈み、次のステージに進むことができない。日本のテレビ業界は、ブロードバンド政策と込みで、再編成すべきと思う。

<参考記事>
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20101224/217733/