ヨルダンの王妃と雅子妃の夢

バルセロナのMobile World Congressから帰ってきたばかり。久々にアメリカと日本の間の無限ループを脱して違う世界を見て、いろいろと新鮮な驚きを感じている。

真面目な話はおいといて、火曜日のキーノートには、ヨルダンのラニア・アル・アブドラ王妃という方が登壇した。大手キャリアやメーカーのトップが話す二つのセッションの間にはさまった幕合に、「1GOAL」という運動への協力を訴えたものだ。

1GOALというのは、サッカーのワールドカップにひっかけ、今年の4月より、世界中の携帯電話キャリアの協力を得て、途上国の貧しい子どもたちの教育のために資金を投入するよう、世界のリーダーたちへの請願書に「携帯からの署名」を集めるというもの。直接お金を寄付するという話ではどうもなさそうだし、サッカーに関わりのある携帯アプリを各社が提供するという話のようだったがそれと署名がどう関係あるとか、なんだか具体的な話は半分ぐらい理解はできなかったのだが、なにしろ説明ビデオには、日本なら孫さん、その他世界主要キャリアのトップが「私もサポートします」とか出てきて、王妃が発案しGSMAが協力する、えらく壮大な世界大チャリティである。

何がすごいって、とにかくこの王妃様、ちょっとアンジェリーナ・ジョリー風の美人で、颯爽としていて、熱心に活動への協力を呼びかけるスピーチも、純粋で熱い思いが感じられて、超かっこいいのである。しかも、そのへんの女優ごときではなく、正真正銘の王妃様、本物の現代のクイーンなのだ。彼女に訴えかけられたら、お金持ちのおじさんたちはホイホイ寄付などしてしまいそうだ。

これまで何度か書いているように、フィランソロピーというのは欧米ではお金持ちの社交場でもあり、いわば、種々の実益を兼ねた名誉ある趣味でもあり、また社会的にこういった地位にある人だからこそできる、他の人にはできない「仕事」「役割」でもある。王妃様は、庶民のように日々の暮らしに汲々とする必要もなく、この先のキャリアをどうするかに頭を悩ますこともなく、ある意味で高尚だけれど夢の世界のような活動に全力で尽くすことができる。一方で、こうして携帯業界団体との人的つながりとか、世界中のキャリアのトップに会って協力してもらうとか、そういったことが簡単にできる世界社交界に立場と影響力を持ち、人を惹きつける魅力を持つという稀有な資質を持つ人もそう世の中ごろごろしているわけではない。こういうことができる人も、世の中必要なのだ。かつて、ダイアナ妃も同じような立場だった。

王妃様を見ていて、ふと雅子妃のことを思った。もしかしたら、雅子さまはこういうふうになりたかったんじゃないか。いや、というより、私は、雅子さまが皇太子妃になったとき、こういうふうになってほしいと期待していたような気がする。世界的な社交界において王妃とか皇后とか皇太子妃とかいう立場を持つことができれば、元外交官だったら、国際的な場でフィランソロピーとして、他の人にはできないことができるはず。日本の皇室は、日本の中では災害被災者を訪問したりするけれど、外に向かってはあまりこういった積極的なことはしてきていない。しかし、雅子さまだったらできるだろう、それは世界の中で日本に対して尊敬や好感をもってもらうことに大いに役立つだろう、と漠然と期待していた。

しかし、そうはならなかった。雅子さまご自身がどう思われているかは知る由もないけれど、なんだか日本が「ガラパゴス」「irrelevancy(存在感のなさ)」を脱する一つの手がかりを逃したみたいで、残念な気がした。今からでも、国際的で、人の為になり、自分の手応えも感じられ、しかも自分の資質や興味を最大限に活かして、他の人にはできない、自己の存在を確認できるような活動を得て、リカバーしてくださる(+周囲がそれを禁止せず圧迫しない)ことを祈るばかりである。

ちなみに、「1GOAL」運動には、日本ではドコモとソフトバンクアメリカではAT&Tが協力している。4月開始前には、なんらかの告知があると思うので、ご注目ください。

また、ラニア王妃のTwitterアカウントは下記のとおり。ビル・ゲイツともTwitter友達のようだ。
Rania Al Abdullah (@QueenRania) | Twitter

<追記>
YouTubeチャンネルの情報もいただきました。
Queen Rania - YouTube