新型インフルはそろそろ終息だと思うよ -- 最前線での体感

カリフォルニアは、メキシコと境を接しているので、アメリカの中でもテキサスと並んで「新型インフルエンザ」が多く出ている「最前線」。最初、国境近いサンディエゴから始まり、ロサンゼルスへと北上、その後順番からいくとサンノゼあたりのはずだが、ほぼ同時にもっと北のサクラメントでほぼ同時に感染者が出た。カリフォルニアのハイウェイ路線と人・モノの流通経路を示しているようで、面白い。*1

ベイエリアは、南のサンノゼと北のサクラメントから、ちょうど「挟み撃ち」状態でじわじわと追い詰められているような感じだった。毎朝、テレビのローカルニュースでは、カウンティ(郡)ごとの感染者数と学校閉鎖数を地図で流していた。一昨日の時点で、私の住むサンマテオ・カウンティは、その中で「感染者1人、学校閉鎖なし」と、一番被害の軽いカウンティだったが、先週は連日のように、学校や学区事務所や医者から、「こういう症状が出たらすぐに医者にかかれ」といったお知らせがバンバン流れていた。

いつもゴールデンウィークには、お休みを利用して当地に視察に来る、日本企業の幹部の方が多いのだが、今回はインフル騒ぎで来るのをやめた人が多かった。*2成田での機内検疫も相変わらず念入りのようで、くだんの朝のローカルニュースでも、成田の「サーモグラフィ」のことをレポートしたりしていた。いまどき、当地から日本に行く予定の人に、「来るな」とかいう話もあるのでは、とちょっと心配している。

しかし、どうも昨日あたりから、テレビのニュースでの扱いが低くなったように思う。先週学校閉鎖を開始した学校は、1週間が過ぎて、続々再開を始めた、との報が昨日流れ、今朝はサンタバーバラの山火事のほうがおおごとだったせいもあり、「学校閉鎖地図」をテレビでやらなかったように思う。(ずっと見ていたわけではないので、断言できないが・・・)

皆様ご存知のように、今回の新型インフルは、感染力は強いが毒性は弱いそうで、発症から1週間以内に医者にかかればだいたい治る。最初に大騒ぎになったメキシコでも、当初「なんだかわからずに医者にかからなかった」人たち以降は、死者も重症者もほとんど出ていない。当初恐れられていた、昔の「スペイン風邪」のような話にはなっていないようだ。

もちろん、アメリカのプレスも大騒ぎしていた。どうもこれは「不況の話以外の大ニュースがやっと出現」ということで、必要以上にあおったところもあるような気がしている。「外堀を埋められ、本丸に追い詰められた」ような状態のわがカウンティの住人でも、お母さん達は落ち着いていて、「だいたい、大げさなのよね、テレビは。」「ふつうのインフルエンザのほうが、毎年よっぽどたくさんの人が死んでるし。」といった感覚であった。

しかし、日米ともに、「大騒ぎしたおかげで、これで済んだ」のだろうから、騒ぎは一定の役割を果たしたとも思う。昔のように、テレビでちょっと流せば誰にでも情報が届くわけではないが、「全国的」に大騒ぎして、TwitterやGoogleMapsなどなど、いろいろなメディアで情報が流れ、より多くの人に迅速に警告が流れたおかげで、皆予防策をとるし、症状が出たらすぐに医者にかけこむようになった。「不治の病ではない」という情報もきちんと伝わり、必要以上にパニックになることもない。特にアメリカでは、誰もはっきり言わないけれど、英語が苦手でネットも使わず、一番情報が流れにくい「メキシコ系」の人々が一番「リスキー」(実際に、メキシコの家族との接触が感染源として多い)だったワケなので、その人たちにも伝わるように、爆発的な騒ぎ方をすることに意味があったのだろう。

ということなので、そろそろ騒ぎは役割を終えたと思う。ほぼ情報はいきわたり、学校は再開し始めている。

昨日、アメリカ人のお母さん仲間から聞いた話。彼女の友達の娘さん(高校生)は、来週から日本に修学旅行に行く予定(すごい学校だな・・・)なのだが、日本では検疫が厳しいとニュースでやっているので、「アメリカ人は来てはいけない」と言われるんじゃないか、とひどく心配しているのだそうだ。彼女は日本が好きで、3年間一生懸命日本語を勉強して、いろいろと調べて、すごく楽しみにしていたので、もし行かれなかったらあまりにかわいそうだ、という。私は「検疫で時間はかかるらしいけれど、来るなとは言われないから大丈夫。最初1-2時間ぐらい機内検疫をやって、そこでひっかかると精密検査になるので、さらに数時間かかるらしい。でも、ちょっとひっかかっただけで『強制送還』などといった話はないので、本当に感染しているのでなければ心配ない。円高なのはちょっと不便だけれど、日本も不況でモノは安いみたいだし、なにしろ日本は安全だから、高校生のお嬢さんでも安心だよ。」と話した。

日本の皆様、このお嬢さんのような人たちを、「バイキン」扱いしないでください。もう大丈夫ですから。宜しくお願いします。

*1:ロサンゼルスから北に向かう幹線道路ハイウェイ5号線は、サンノゼ・サンフランシスコに行かず、砂漠の中をまっすぐ北上してサクラメントに直結している。ハイウェイ路線距離では、サンフランシスコよりサクラメントのほうがロスに近い。

*2:実は、経費削減のために出張を減らしたい、という下心があって、騒ぎに便乗した、という憶測もあり。