ワーキングマザーの孤独

今日のジャパン・ソサエティのパネル・ディスカッションは、とても楽しかった。モデレーターはコンサルタント(Gallasus)の橋本ちかさん、パネルは武田薬品サンフランシスコ社長のメアリー・ハーク・フレンショウさんと、グーグル社内弁護士しょうじ・あきさん(ごめーん、みんな漢字を知らないのだ・・・)と私の3人で、「Women in Workforce - lessons from Silicon Vally」というタイトルでしゃべった。(Japan Society Northern CaliforniaとJETROの共催。お招きいただき、ありがとうございました。)

それぞれに、日本とアメリカの間で働く場において、女性やワーキングマザーであることの苦労と、逆によいところや面白さ、どうやって問題を切り抜けているのか、など、共感できるところが多かったし、また質問も、これから就職しようという女性、奥さんが似たような苦労している男性、などなど、いろいろな立場からの質問があり、議論が盛り上がった。

その中で、特に私の印象に残ったやりとりがこれ。(抄訳)

メアリー「仕事以外での人間関係や仕事以外の活動をうまくキープできるようなバランスが欲しいものだ。多くの場合、男性はそれをキープして、例えば仕事を替わるときなどでも、その人脈を活用している。」
アキ「そうそう、私は、仕事と子育てという2つの柱だけで24時間いっぱいになってしまって、『自分』という3番目の柱まで時間がまわせない。どうか、若い方は、私のまねはしないでほしい。」

質問者(男性)「第3の柱を実現するためには、どうやっているのか?」
アキ「それがわかれば教えてほしい・・」
私「私も同感だけれど、一つささやかな解決策は、ブログを書くこと。絵を描くとか、なんとか、自分のやりたいことにまとまって時間を割くことはできないけれど、私は文章を書くことが気晴らしでもあるので、短い時間でブログを書き、自分を表現できるし、それを面白がってくれる人がいると、楽しみになる。ブログやその他のネットのツールを使えば、比較的短時間で自分なりの人脈をつくり、育てることもできる。」
アキ「そういえばそのとおり。自分もブログはやらないけれど、SNSで自分の友達とのつながりをキープできる。」

思わず出た答えだったのだけれど、、あとで思い返してみると、「はた!」と気づいた。「なんでお金にもならない(いや、少しはなってるけれど)ブログにこんなに一生懸命書くのか?」と周囲に不思議がられながらも、相変わらず一生懸命書いてるのは、確かに、クライアントに頼まれたことしか書けない報告書でなく、自分の書きたいことを書く、という「気晴らし」の意味もある。そしてそれだけでなく、ワーキングマザーの隠れた敵である「孤独」から逃れるささやかな手段なのだ、と気づいたのだ。

時間が最大の「希少資源」であるワーキングマザーにとって、一緒にお茶をすることで、ママ友をつくる時間はない。PTA活動などに参加して、友達を作ろうと努力したことが何度もあるが、いつもその後、強烈に忙しくなって結局途中でほっぽり出す羽目になった。仕事を通じた知り合いや友人はいるけれど、気の置けない友達を作ったり、その友達と遊びに行ったりする時間も気力もない。カリフォルニアに引っ越してきた当初は頑張ってやったけれど、人の出入りが激しく、親しくなった友人ほど、すぐにどこかに引越してしまう。ネットワーキングの集まりに出ようとすると、その夜は亭主が家にいるか、他の予定はないか、子供のお稽古事などとのコンフリクトはないか、その日の夕食と宿題をどうするか指示を出し・・・などといろいろ配慮がいるので、結局面倒になる。地理的に近くだろうが遠くだろうが、友達のことを気にかけて電話したりメールしたりする気力はなかなか出ない。だんだんと縁遠くなってしまう。

気がつくと、友達が近くに誰もいない。特に子供のいる女性は、自分に何かあったときに頼れる人をなるべくたくさんつくっておこうという本能があるせいか、友達が近くにいない孤独は、ひどく不安だ。

私にとっては、そんな不安を少しでも解消するのが、ブログやSNSなのかもしれないなー、と思った。ブログやSNSに何か書いておけば、誰かが私のことを知っておいてくれる。細いつながりかもしれないけれど、何もないよりずっといい。そういうことなんじゃないか、と思った。